カゲロウプロジェクト 私の居場所

□第三話
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 私の誕生日から、そしてカノと付き合い始めてから数週間。

「ねえカノ、あの子が新人ちゃん?」

私はカノに誘われて、新人ちゃんと待ち合わせたという公園にきていた。
 今は私の「目を代わる」によって発動している「隠す」で、その新人ちゃんの様子を見ている最中だ。

「そうそう。結構可愛い子でしょ?」

カノの言う新人ちゃん、とは今ブランコに一人で座っている同い年くらいの女の子。
 茶髪の髪をツインテールにし、白やピンクといったいかにも女の子らしいファッションに身を包んでいた。


 確かに、かわいい子だとは思うけど。


 正直、黒っぽい服とかばかり着てファッションにそれほど気を付けもしない私とは正反対に思える。 
 カノもやっぱり、そういう子の方がいいのかな。

「それには賛成だけど、私打ち解ける自信ないよ?」

なんて考えているがカノにばれないようにしながら、私は言った。
 別に人付き合いが悪いというわけではないが、苦手な人間はできるだけ避ける主義である。

「大丈夫だって!何度か話したけど、良い子だからさ」

それとも、と不意に私に顔を近づけたカノが、

「もしかしてアカネ、妬いた?」

と、言ってニヤッと笑う。



「……バカ」



私が小さくつぶやいて視線を逸らすと、カノはそっと私の頭をなでる。

「ごめんってば。僕の一番は朱音だよ?」

私も単純なものだ。
 カノの言葉があれば、先ほどまで感じていたはずのもやもやすらあっという間に溶けて消えてしまう。
 ほら、そろそろ行こう、とカノが私の手をとって立ち上がらせた。

「わかった」

なんだか釈然としない気分のまま、私は「隠す」を解除する。
 同時に、

「あ、修哉さん!」

と、少女が大きく手を振るのが見えた。
 そしてその表情が一瞬だけ固まる。
 そして私も、一瞬だけ足を止めた。





 パチッ……と、一瞬だけ少女と私の視線がぶつかる。





 ゾクッとした。





 その奥に隠されているように見えた、黒い感情に。





 が。

「やっほー、ミキちゃん」

と、能天気に声をかけたカノはその一瞬に気付かなかったらしい。
 私はカノにそのまま手を引かれて、少女の前まで行った。

「あの、その人は…?」

ミキちゃんの目が、明らかに警戒……いや、半分は敵意に染まっているのを見た私は咄嗟に笑顔を欺いた。

「私はメカクシ団団員bS、アカネです」

「いや、さすがに僕だけじゃ団に入ったときに心細いと思って。どうせだからもう一人仲良くなってもらおうかなーってことで、幼馴染のアカネに声をかけたんだ。真っ黒で怪しい人っぽいけど可愛いところもあるから、仲良くしてあげてね」

「は、はぁ…」

完全に戸惑っているミキちゃんに私は改めて笑いかけ、

「私は話すの、得意じゃないんだけど…。まあ、よろしくね」

と手を差し出す。

「えと、高野美希です。よろしくお願いします」

ミキちゃんが私の手を取りながら、一瞬だけ黒い表情をだした気がした。
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