ミカグラ学園組曲 欠陥品マリオネット 完結

□第六幕
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Side 少女

 外はひどい雨だった。

 私は傘もささずに星鎖先輩の屋敷まで歩く。

 一人で歩くのはいつぶりだろう。

 いつも翔がいて、最近はトンきゅん君がいるのが、当たり前になって。

 でも、それも終わり。

 全部、自分で終わらせたから。

「あぁ、なんでかな……」

雨のせいか人もいないから、私のつぶやきを拾う人もいない。

「そっか」


私が、欠陥品だから。


 欠陥品が、糸が切れたら何もできない人形が。


 人になれるなんて夢を描いたから。


 願ってしまったからか。


 これはその、対価か。


「ごめん、なさいっ……ごめんなさい……」

私はその場に座り込む。


 私のせいだ。


 私のせいで、あんな優しい先輩たちに迷惑かけて。


 赤間先輩を怒らせて。


 トンきゅん君まで、傷つけて。


 やっぱり私は欠陥品。


 人に不幸をまき散らすことしかできない、欠陥品マリオネット。


 操ってるのはさしずめ、あの子だろう。


「おい、凛っ!」

顔を上げると、傘を投げ出した翔が走ってくるのが見えた。


 来ないでよ。


 もう放っておいて。


 誰も傷つけたくないの。


 誰も不幸にしたくないの。


 だからねぇ。




「来ないでっ!」




知らない間に現れていたぬいぐるみたちが、一斉に牙をむく。

 だが、翔は構わず私の傍へ来る。


 ねぇなんで。


 傷つきたくないでしょう?


 不幸になりたくないでしょう?


 なら来ないで。


 もう来ないでよ。




「凛っ!」




ぎゅっと抱きしめられて、ふと我に返る。

「翔……?」

「落ち着け……大丈夫だから。俺はお前を置いて行ったりしない。裏切らないから」

すっと脳裏にはびこっていた黒い文字が消えていく。

「翔…………っ!」

代わりに残ったのは、痛みと苦しさ。



 そして、悲しみだけで。



 私は翔の肩に顔をうずめて泣いた。
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