ミカグラ学園組曲 欠陥品マリオネット 完結

□第七幕
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Side 少年


「俺と、模擬戦をしてください」


今、俺は凛さんの部屋の前にいる。
 翔先生にあったら絶対止められるからどうしようかとも思ったが、御神楽先輩のメイドをしているという鳴海先生の手引きによってたどり着くことができた。
 翔先生は今、学園長に呼び出されているらしい。
 戻ってくるまでが勝負だ。


「負けたほうが勝った人の命令を一つ聞く。条件はそれだけです」


ただ口で説得していては間に合わない。
 力技だが、これしか思いつかなかった。
 中等部から能力を使ってきた彼女と、能力が目覚めたばかりと言ってもいい俺で勝てるかどうか、そもそも勝負になるかもわからないけど。


 それでも、決めたのだ。


 演劇部のために、彼女のために。


 そして何より、自分のこの想いのために。



「俺が負けたら、もう貴女には干渉しません」



だからこそ、この想いを賭ける。



「でも、もし俺が勝ったら」



「おいっ!」

タイムアップか。

 聞こえた翔先生の声に、俺はギュッと手を握り締めた。


「凛さん、お願いしますっ!俺と、一度だけでいい。模擬戦をしてくれませんか!」


「お前っ!」


駆けてきた翔先生を俺は慌てて避ける。


 が、その瞬間だった。


「翔、やめてっ!」


ドアを開けて、彼女が顔を見せたのだ。

 いつものマントは着ておらず、普段着なのかワンピース姿で、お守りのように猫のぬいぐるみを抱えたまま。


「……いい、から」


「え?」


俺は翔先生を警戒しながらも、



凛さんに聞き返した。



「模擬戦……やる、から」


ぎゅっとぬいぐるみに顔をうずめるような彼女は、すっと上目づかいに俺を見る。


「だから、条件ひとつ。……完全非公開で、ギャラリーなし。そうじゃないなら、やらない」


そんな彼女に、俺は頷いて見せた。


「初めからそのつもりです。貴女を見世物にする気はありませんよ」


「じゃあ、いい」


「おい、凛っ」


翔先生の切羽詰まった声を、凛さんは首を振って制す。


「今夜、八時。ホール」


「わかりました」


俺は凛さんと翔先生に一礼をして歩き出した。





 今夜、全てが決まるのだ。




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