ミカグラ学園組曲 欠陥品マリオネット 完結
□第五幕
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「凛さんっ!」
俺は思わず呼びかける。
振り返った彼女は、目を見開いて首をかしげていた。
俺が一度も見たことのない、彼女のくるくると変わる表情が。
酷く酷く、作り物に思えて。
「本当なんですか?貴女が、全部やったんですか?」
俺は思わず問うていた。
否定してほしくて。
いっそ泣いてでもいい。
自分はやったんじゃないと、言ってほしくて。
なのに彼女は、笑っていた。
「うん、ホント」
さらりと、肯定して。
「ごめんね、トンきゅん君。私は君を、利用した」
「え?」
見たこともない笑顔のまま、彼女は俺に言い放つ。
「演劇部に近づくために、君を利用したの。心を閉ざしたまま、心を開いたふりをして。あっさり引っかかっちゃうんだもん。これを機に気を付けて」
「ふざけんなよっ!」
俺より後ろから響いた声。
赤間代表だった。
「お前、トンきゅんがどんな思いでお前のことを見てきたかわかってる?それを、こんな形で踏みにじって」
「だから!」
負けじと凛さんも怒鳴り返す。
「それもこれも全部演技!第一、引っかかる方が悪いんだって……私はそう学んだからね」
一瞬、我を忘れたかのように見えた彼女はだがすぐに冷静に戻ったらしい。
「これにこりたら、そう簡単に人を信じないことだよ」
今度こそ、彼女は背を向けて歩き去る。
俺はただ小さくなっていくその背中を、見送ることしかできなかった。