ミカグラ学園組曲 欠陥品マリオネット 完結
□第四幕
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Side 少女
毎度のごとく、今回は五時間目の授業を抜け出し保健室へと逃げ込んだ私は、
「演劇部、か……」
と、小さくつぶやいた。
中等部の時以来だと思う。
たしか、交流会の劇で使う衣装を作る手伝いをしたんだ、と古い記憶を引っ張り出した。
その時は、代表さんや熊野さん先輩やにゃみりん先輩たちがすごく優しくしてくれて、楽しかったのを覚えてる。
あの部活なら、もしかしたら。
大丈夫かもしれない、とちょっとだけ期待を覚える。
(たしか、演劇部の部室は……)
丁度、保健室の隣だったはずだ。
少し距離はあるが、授業中のこの時間なら誰にも会うことなく行けるだろう。
近くに講演があって準備をしている真っ最中だから、鍵は開け放してあるともトンきゅん君が言っていた。
ちょっとだけ、見に行こう。
「えと……お邪魔します」
誰もいない部室だが、私は思わず声をかけながら恐る恐る中へ足を踏み入れた。
そして真っ先に目に映ったのは、
「すごい……」
背景に使うと思われる大道具のセット。
そしてその前には製作途中らしい衣装が小道具、机の上には誰かの台本も置かれていた。
一年ほど前の、あの時も。
こんな風に散らかしながら、みんなで一生懸命準備をした。
忙しくて、騒がしくて、だけどすごく楽しかった。
あの子の笑顔が、甦る。
「なんで……こんなことに、なっちゃのかな……」
私の問いは誰にも拾われずに、零れ落ちた。