ミカグラ学園組曲 欠陥品マリオネット 完結
□第五幕
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Side 少年
三人で部室へと走っていくと、問題の部屋――衣装や大道具を置いてある部屋の前に部員の人だかりができていた。
「何があったの?」
「わかりません。私がきたらこの状態で……」
中から赤間代表と誰かが話をする声がする。
「ちょっと……通してくださいっす!」
うさ丸がそう声を上げると、野次馬らしい一団は道を開けた。
丁度見えた入り口のところで俺らは足を止め、その惨状を目の当たりにする。
背景に使うために準備していた大道具は破壊され、衣装はズタズタに引き裂かれて、あらゆる残骸が床に散乱していた。
さらには絵具か何かが飛び散って、背景の無事な部分も別の色に染まってしまっている。
その中央に座り込んでいるのはあのツインテールの少女で、話を聞こうとしゃがみこんでいるのは赤間代表。
周りにはにゃみりん先輩や熊野さん先輩の姿があった。
「昼休み、準備しに来たときは?」
「ちゃんとしてました。途中だったけど、道具とかは全部片付けてましたし……」
それが放課後になったら、と少女は手で顔を覆う。
「こんなの……ひどいっ……」
その膝の上には鋏か何かできられたと思われる、ワンピースが。
おそらくその少女がつくった衣装なのだろう。
「杏ちゃん……」
慰めるようにその頭をなでた赤間代表は、何かを探すように部屋を見渡す。
と、その視線が俺らに止まった。
「トンきゅん、うさ丸……」
そして、複雑な表情で凛さんを見る。
が、彼女の視線は凛と呼ばれた少女に固定されており、そしてその杏さんが顔を上げて
――突然立ち上がった。
「貴女ねっ!」
「っ!」
杏さんは、凛さんを指さしてにらみつけている。
凛さんは明らかに怯えた様子で一歩
下がった。
「五時間目、黒い服の人が部室に入るのを見たの!また……また貴女なのね、
凛っ!」