暗闇の先に

□19,新しい世界
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「あの男を見つけた時…クローゼットに隠れるメイをみつけた時のことを思い出した。

……お前と同じ目をしてた。」


車が走り出すとそう言ったダリル。


「私、あんなに怯えてた?」


「あぁ、あいつみたいに身を縮めてクローゼットの中に隠れて…子犬みたいな目をしてた。」


その言葉につい赤面し、両手で顔を覆う。


「メイ聞いてくれ、元産科医を見つけた。」


車内後方部にいるマギーを見守っていたグレンがそんな私に声をかける。

あぁ…助かった。


「あれ?…どうかした?」


「なんでもないなんでもない!!

産科医⁇......通りで丁寧な処置がしてあったのね。」


私はグレンの問いに全否定しながらに微笑み、隣で私のお腹あたりを突っついてくるダリルの手を弾き返す。

そして奥にいるマギーと産科医だという男の方を見た。

マギーと産科医、そしてもちろんグレンもとても嬉しそう。


だがその時、車はぬかるみにはまったらしく突然に止まった。


「嵐が通ったようだな。」


運転席のリックは呟きながらアクセルを踏むが、タイヤは空回りしている。


「いや、心配ない到着だ。

......ヒルトップはすぐそこだ。」


ジーザスはそう言った。




「止まれ‼」


車を降り、ジーザスを先頭に歩いてた私達だが町の看守からは銃を向けられ、私たちはそれぞれ武器を構える。


「どういうことだ?」


看守はこちらに銃を向けているが一発も発砲はしない。


「門を開けろ、怪我人がいる。

悪いね、暇すぎてイライラしてる。」


ジーザスは両者の間を取り持ちながら言う。


「武器を渡したら開ける。」


向こうは好意的ではないみたいだ。


「奪ってみろ」


「みんな、信用しろ。彼らは命の恩人達だ。」


産科医だというハーランはそう言ったが、看守たちは誰も聞く耳を持たない。


「槍を下せ。」


「リーダーを呼びに行かせろ。」


未だみんなを説得させるジーザスにリックは言った。


そうだ。

入れてもらえないのならこのままここで話をするしかないのだろう。


「いいや、わかったろ、武器は取らない。
こちらは弾切れだ。

君たちを…信じる。信じてくれ。」


ジーザスのその言葉にリックは私達に武器を下げるように指示した。


「門を開けろ。」


私達が武器を下げた事が功を成したのか、今度こそ門を開けてもらう事ができた。

ジーザスの先導で町へと入るとそこには野菜栽培のプランターが沢山あり、家畜が居る…多くの住人が仕事をしていた。



「いつでも来てくれ、そのトレーラーだ。」


ハーランはマギーに言って、そのままトレーラーへと入って行った。


「電力会社の資材置き場から壁の材料を調達した。 緊急事態管理庁のトレーラーだ。

このバーリントンハウスは30年代に州に寄贈され歴史博物館として公開され、周囲50マイルの小学生が見学に訪れた。

現代世界よりずっと前からある。

上の窓から全方向を見渡せて安全を保てる。
中へ案内しよう。」


そう言いながら、建物の中へと案内してくれるジーザス。

たしかにこれだけ大きな建物があればあたりをよく見回すことが出来るだろう。


「ジーザス、おかえり。来客か?」


私たちがその博物館に入るとタイミングを見計らっていたかのように扉が開き、ひとりの男性が出てきた。


「彼はグレゴリー、街全体を管理してる。」


「あぁ、私がボスだ。」


グレゴリーと呼ばれる人はどこか偉そうにそう言った。


「俺はリッ...「シャワーを浴びてこい」


グレゴリーはリックの挨拶すら聞かず、会話を遮って言う。

初めの挨拶といい今の態度といい...これから取引を持ちかけるというのに、上手くやれるのだろうか。


「無用だ。」


「ジーザスが案内する。話しはその後だ。」


グレゴリーという人は話をする意思はありそうなのだが、全くこちらに聞く耳を持たない。




「君が彼と話せ。」


順番にシャワーを浴び、一番最後のエイブラハムを待つ間、リックはマギーにそう言った。


「どうして?」


「彼との話し合いは君の方が適任だ。」


不服そうにもリックは呟く。


やはり先程の態度でリックは何かを感じとったようだ。


たしかにリックとの話しだと先程の二の舞になるだろう。

リックの選択はきっと正しい。






「取引は無しよ。助けは要らないって。」


話を終えたらしいマギーは私たちの待つロビーに戻って来るなり言った。
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