暗闇の先に
□17,暗闇の先の光
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「いいか?俺には経験がある。
アトランタにいた頃にグレンとそうやって大通りを渡った。
ダリルはウォーカーの耳をぶら下げてたこともあるし君は......まぁいい。
なるべくゆっくり歩いて奴らになりきるんだ。」
ミショーンの方を見て言葉をつまらせたリックだが、彼はその後すぐに足元に横たわる完全に死んだ二体のウォーカーに斧を振りかざした。
「俺が先頭を...次にメイ、サム、ジェシー、カールとジュディス、ロン、ゲイブリエル、ミショーンだ。
そうだな...歩みを統一化させるためにも手をつないで行こう。」
そう言うとリックは私の手を取り、玄関から外の様子を確認するが、外は大勢のウォーカーで溢れている。
ゆっくりと外へ歩き出すと、思っていたよりもウォーカーとの距離は近かったが、うまくカモフラージュできていることにホッとする。
とはいえ段々と陽は暮れかけてきたし、できればなるべく明るいうちに武器庫へたどり着きたい。
そう思いながらも歩き続け、ちょうど武器庫まで半分といったところでリックは立ち止まった。
「作戦を立て直そう。
ウォーカーの数が多すぎて照明弾じゃ不十分だ。
武器庫へはいかず、採石場へ車を取りに行き、車で奴らを引き戻させる。
一度町をでて戻るんだ。」
みんなの顔を見ながらそう言ったリック。
「わかったわ。でもジュディスは採石場までは...「私が預かる。安全が確保できるまで教会に。」
ジュディスを連れていけないと言ったジェシーにゲイブリエルはそう言った。
彼にジュディスを任せて本当に大丈夫だろうか。
「できるの?」
私が思っていると、ミショーンが先にそう言った。
「やるよ...やるしかない。できるさ。」
はっきりとそう言った彼にリックは頷いて、カールのシーツの中からジュディスを出して彼に託す。
「サムも一緒に。」
そんな姿を見ていたジェシーはゲイブリエルに言う。
「イヤだ「サム、安全だから。」
だがサムの意思は違うようだ。
「一緒に行く。お願い、行けるから。」
「サム」
「行けるから。お願い。いいでしょ。一緒に行く。」
そう必死に訴えるサム。
「彼は平気だって言ってるわ。」
私はリックとジェシーに言う。
そして私はサムとリックの手を握り、再出発の準備をした。
「この子は守る。」
ジュディスを抱いたゲイブリエルが言い、リックが"ありがとう"と返事をしたところで彼は教会へと向かい、私達も採石場に向けて出発した。
だが出発してすぐ、サムは突然私の手を離した。
「サム!サム...行きましょう。
いい子だから、サム...サム!行くわよ!!」
「行くぞ。」
「サム大丈夫だ...ママを見ろ。」
ジェシーやリック、ロンが声をかけても固まってしまい動けないサム。
「ねぇサム、信じて?大丈夫だから。」
「行きたいけど...」
そう言ってサムを落ち着かせようとしたが、彼は泣きながらそう言う。
「感情のスイッチを…」
感情のスイッチを切り、ただ足を動かせばいいと言おうとした私だが、目の前のサムの表情を見て言葉を詰まらせる。
リックやジェシー、ロン達もサムに声をかけるが彼の足はまだ固まったまま。
「リック...私が前を歩くから、サムを抱え「サムっ‼」
私がリックに彼を抱えるように頼んだ直後...サムはウォーカーに噛まれ、ジェシーは叫ぶ。
「ジェシー、ジェシー...ジェシー!!行こう、行くんだ。」
リックは泣き叫ぶジェシーにそう言うが彼女の耳には入っていないらしい。
「ジェシー、早く行かなきゃ!」
彼女にそう声をかけているうちに、ジェシーまでもが噛まれてしまった。
「やめろ...。」
リックは呆然とし、そう呟く。
「父さん...!」
カールはジェシーに掴まれた手を振りほどけないらしく、リックに訴える。
どうにかしなければいけない。
...まさかこんなことになるなんて。
私は繋いだままのリックの手を強く握り、彼を現実に引き戻させた。
するとリックは斧に手をかけ、まっすぐにジェシーの元へ行き、彼女の手に斧を振りかざし、カールと私の手を繋がせる。
「行くんだ...行かなくちゃいけない。」
「お前が...」
リックの言葉に私とカールが頷いたのとほぼ同時にロンはこちらの方に銃を向けて一発発砲した。
「...?!...ァ..アッ!!ァアッ‼‼」
その直後、私は肩に鋭い痛みと熱を感じ、そのままうずくまる。
肩を押さえるが傷に触れたことでさらに痛みは増した。
だが止血はしなくちゃいけないし抑えないわけにもいかない。