暗闇の先に

□14,安全地帯
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少しして家から出てきたリックは、武器を保管庫に預けると言った。


どうやらリックはここに留まる事を決めたみたいだ。

それから女性に武器を預けると、私達は家に案内された。


綺麗な2つの一軒家。


「この2軒はあなた達に用意してたの。

自由に使うといいわ。」


リックや私達にそう言った彼女。


「あとで日用品を持って来させるし...先にシャワーを浴びなさい?

それと次はあなた、オーディションよ。」


彼女はそう言ってダリルを指名すると、2人で彼女の家へと行ってしまった。


「それじゃぁ、僕は行くよ。

あそこの家に居るから、何かあったら声をかけてくれ。」


私達と居てくれたアーロンも行ってしまう。


「...グレン、マギー、エイブラハム、ロジータはそっちを。

ミショーン、キャロル、サシャ、カールはこっちだ。」


唯一所持を許されたナイフを構え、リックは言った。


「メイ、ジュディスを頼める⁇」


そう言って私にジュディスを預けるリック。


「もちろん。」


私はジュディスを抱き、安全確認を待った。


ものの数分で安全確認が終わると、それぞれの家からみんなが出てくる。


「...今夜は念のため、みんな一緒に過ごすんだ。」


リックは最後にそう言うと、ひとつの家に入るように言った。


「メイ。」


家の中を見て回っていると、リックに呼び止められた。


「君もシャワーを浴びろ。
レディファーストなんだ。

後ろがつっかえてる。」


リックはそう言う。


「あぁ...うん、今行くよ。」


そしてシャワーのある洗面所へと行く。

その途中には、久しぶりにシャワーを浴びてサッパリしきったみんなとすれ違った。




ここの設備は思ったよりもよく、お湯のシャワーで体を洗い流すことができた。


ここに来たのはやはり正解だったのだろう。


シャワーを出て支給された綺麗な服に着替えた私は、カールとバトンタッチをしてソファーに座った。


窓からは外に居るダリルが目に入る。

きっとオーディションが終わったのだろう。


一人家の中に入らず、ポーチに腰掛ける彼。


私はそんな彼の元に行き、すぐ隣に座った。


「中、行かねぇのかよ⁇」


私にそう言ったダリル。


「あなたこそ。」


「落ちつかねぇんだ。」


彼はボソっとそう言った。


「確かに、逆に落ち着かないよね。」


「逆に......か。」


そう言うとダリルは持っていたネズミのお腹にナイフを入れ、"食事の支度"を始めた。


私はそんな彼を見ながら、ボーッと空を眺める。

最近、気がつけば空を見ている気がする。


......そういえば私はいつから空を見るようになったのだっけ⁇


ウォーカーを気にせずこんな風に外で過ごせることがどれだけ恵まれてることか。


「あなたはシャワーを浴びないの?」


「落ちつかねぇって言ったろ⁇」


そう言って一人黙々とネズミを食べ続けるダリル。

そんなダリルに、私は寄り添ってウトウトとした。

そうしている間にも空はゆっくりと赤く染まっていく。

本当に安全地帯に来れたんだ。




「二人とも、中に入りな?
寝るときは一緒だよ。」


辺りが暗くなると、ミショーンがポーチに来てそう言った。


「えぇ、わかった。」


私は立ち上がり、ダリルの手を取って彼を中へ誘導する。

きっと彼はこうしない限りずっと外に居ただろう。

壁にもたれて絨毯やソファーで横になり、それぞれが自分の寝る場所を探す。


私も空いていた壁に寄りかかり、置いてあった毛布をかけることにした。


「少しいいかしら?」


突然玄関からやってきたディアナ。


「あら、みんなでいるのね、賢いわ。

どうしてるかと思って様子を見に来たのだけど、困ったことはなさそうね。」


笑顔でそう言ったディアナ。

彼女は本当に良い人なんだろう。


「他人同士だった人々が、このようなグループを形成していて素晴らしいと思う。

それとここではそれぞれに仕事を持ってもらいたいの。

明日以降に追って伝えるわ。
それじゃあ、おやすみなさい。」


彼女は私達にそう言って家を出て行った。


そしてそれからすぐ、私は眠ってしまった。
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