暗闇の先に

□8,大切な人
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『なぁメイ、こないだのは仕方なくやったんだ。
わかってくれ。お前は俺の娘だろ?』


『確かにこないだのはそうかもしれない。
...けど、それ以前のは⁇』


私は父にそう言い、また悩んだ。


ここに居るのは総督と一緒に攻撃に来たから。

総督が逃げなければ私は父をも殺すつもりだった。

元々殺すつもりだったならここで生かす必要はないのかもしれない。


あの時のお母さんを見て思ったんだ。

...絶対に許さないって。


「メイ⁇」


私と父の会話を理解できていないマギーは心配そうな声で言った。


「...大丈夫。

私の家族が誰かは知ってるでしょ⁇」


私はマギーにそう言った。


『おいメイ‼お前の親父だぞ⁇』


『...だけど、あなたよりも私を家族らしく迎えてくれる人たちが居る。』


そうだ。

悲しいことに私はこの人から愛情を感じた事などない。

こんな世界だけれども、ここのみんなといる方が何百倍も愛を感じることができる。


『誰がお前を助けたと思ってる⁇

捕まったお前を助けに来たメルルと弟が、簡単にウッドベリーに入れるわけがないと思わないか⁇

誰かが見て見ぬふりをしたんじゃないかとは考えないのか⁇』


...そんなはずがない。

この人がそんなことをするはずがない。


『誰があんな軟弱なミルトンに捕虜の食事の配給を頼む?

おかしいと思わないか⁇』


嘘だ。

......だって、私の知ってる父親はこんな人じゃない。


『なぜお前は殺されずに生きてる?

誰かがお前を庇ったんじゃないかとは、思えないのか⁇』


『そんなこと頼んでもない‼』


私はそう言った。

...過去の父とのギャップに頭の中が混乱し、どうすれば良いのかわからなくなる。


『お前が大切な娘だからそうしたんだ。』


幼い頃から一番聞きたかった言葉。

...そんな言葉に一筋の涙がこぼれた。
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