暗闇の先に
□3,生きる意味
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目が覚めたのは朝日が昇ってからだった。
自身の寝床の無くなったダリルが私の下で眠っている。
...私、ここでずっと⁇
辺りを見回すと隣のソファで1人泣きながらも横になるキャロルが居た。
...まだ見つからないんだ。
「メイ、起きたの⁇」
私の目線に気がついたのかキャロルは言った。
「うん。...私ずっと寝てた⁇」
私の質問にキャロルはそっと頷く。
きっとソフィアが心配であまり寝れて居ないんだろう。
私はそれ以上キャロルと話すことをやめ、ダリルを起こさないようにそーっとソファを抜け出してキャンピングカーの上へ来た。
「...おぉ。起きたのか。」
見張りをしていたデールが言った。
「まぁ、ね。
...一晩中監視を⁇」
「いや、グレンと交代でだよ。」
横でグレンは熟睡していた。
「...そう。」
私は背伸びをし、デールの横に座る。
「足はどうだ⁇」
デールは言った。
「だいぶマシよ。
...ソフィアは⁇」
デールは私の言葉に横に首を振った。
「...そう。」
それから私はしばらく日向ぼっこをした。
みんなが起きると、私とデール、Tドック以外のみんなは森へ出かけた。
残る私にダリルは「気を付けろ。」と言い、ローリは私にナイフを返してくれた。
それから暇になった私はキャンピングカーの中を片付ける。
ぐちゃぐちゃに入れられていた生活用品もあるべき場所に片付けた。
『バァーンッ...』
お昼を過ぎた頃、突然森の方から銃声が聞こえた。
「デール、Tドック⁈今のは⁇」
「わからん...。
上からは何も見えない。」
デール達もわからないらしい。
聞こえたのは1回だけ。
...なんで一発⁇
ウォーカーがたくさん居るなら武器を使うはず。
武器だって、昨日カールが沢山見つけていたから人数分は足りていたはずだし…。
大丈夫...きっともうすぐ帰って来るはず。
私は何度も自分に言い聞かせる。
それからもう一度3人で物資集めをした。
デール曰く、不安な時こそ何かをして気を紛らわすのが良いそうだ。
銃を一丁、缶詰がいくつか入った袋、車用のバッテリーを見つけて持って帰る。
キャンピングカーの近くまで行くとデールとTドックが話していた。
どうやらTドックは敗血症になりかけているらしい。
あの時、私が持っていた除菌綿を全部使ってしまっていたからTドックの分は残ってない。
ガーゼの代わりになりそうな物もなく、本当に応急処置程度のことしかできない。
敗血症になるのも不思議じゃない。
「もう一度、薬を探そう。」
デールのその言葉に私達は薬を探す。
私が見つけたのは酔い止めや生理痛用の薬だけだ。
最悪...使える物がない。
まぁ、痛みぐらいなら押さえれるけど...。
私は薬を諦めてキャンピングカーへ戻る。
「何かあった⁇」
「鎮痛剤があったよ。
効くかどうかはわからない。」
Tドックは私に見せてくれた。
パッケージを見ると私の見つけた薬とそう変わらない物があった。
「効き目は薄いね。」
そう言った私にデールは不思議な顔をする。
「君は医者か⁇」
「違う。ただの看護師助手。
雑用係ってところ。」
私はそう言って薬をTドックに返す。
「熱も出てるしとりあえず休んだ方がいいわ。」
そして突然、森の方から木や葉っぱの揺れる音が聞こえた。
私は腰に入れていたナイフを取り出して構え、音のする方をじっと見る。
...けど、中から出て来たのはグレンだった。
「あぁ...なんだ...よかった。
おかえりなさい。」
森から出てきたのは出発したときの半分程度。
...ソフィアも居なかった。
「他の4人は⁇」
私はダリルに聞いた。
「わからねぇ。
シェーンとリックとカールは別行動をした。
...で、俺達がここへ戻る途中、馬に乗った女がローリーを連れて行った。」
「カールが事故にあったんらしいんだ。
3キロ先の農場に居るって。」
ダリルの言葉にグレンは付け足した。
「ワシらも向かおう。
カールが心配「嫌よ‼
ソフィアが戻って来るかもしれない。
誰も居なかったらあの子はどうするの⁇」
デールの言葉にキャロルは反発する。
「...なら明日の朝出発しよう。
もう一晩ここで寝て、ソフィアを待つ。
明日の朝にもソフィアが来なければ何か目印を置いて出発する。」
みんなをまとめるようにダリルは言った。
「そうしよう。
...だけどメイとTドックは先に行くんだ。
事故の処置をしてるんだろ⁇薬ぐらいはあるはずだ。」
デールは言った。
「薬⁇」
「あぁ、敗血症になりかけてる。
メイにもちゃんとした手当てが必要だろう。」
ダリルはバイクの方へ行き、荷物の中から袋を取り出す。
「薬が必要なら俺に言えよ。
超強力な抗生物質だ。」
ダリルが薬を持っていたことにみんながキョトンとしていると「兄貴のお宝だ。兄貴の淋病には効いたぜ⁇」と言い、薬をデールへ投る。
そして私に「行ってこい。」と言った。
「わかった。
...けどね⁇私は右ハンドルしか運転出来ないの。」
車の免許は持っている。
...だけどそれは日本の物だ。
練習すれば乗れないこともない。
...けど、今はとてもじゃないけど出来ない。
ブレーキだってこんな足で踏めるか...。
「じゃあ、グレンも行くんだ。」
デールはそう言ってグレンの背中を叩く。
ダリルは車に乗り込む私に頬にキスをしてくる。
「ねぇ、君はダリルと付き合ってるの⁇」
出発するとグレンは訪ねてくる。
「さぁ?でも...少なくとも私は好きよ⁇」
私の言葉を聞いて、グレンがニヤリと微笑んだのが横顔で分かった。