like a rainbow
□ずっと...
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数日後。
アルバム用の曲がほとんど完成し、ノブのアルバイトも残すところあと2日といったある日、週刊誌に写真が載った。
《シナモンズソフィー、朝帰り》
復帰記事が出た時と同じく、車に乗ってすぐにスコットが見せてきた週刊誌の表紙にはそう書かれている。
今回は前もってノブに雑誌を読んでもらったのか、私の通訳は必要ないみたいだ。
『ソフィー、あれほど撮られるなって言ったのに...』
『でも、私1人だよ⁇
...ヤスと居たわけじゃないし、バーに居たとかなんとか言い訳できるよ。』
この日、一度家に帰ったところを撮られたのだろう。
この時携帯を持っていたのはきっと、スコットが電話をしてきたからだったよな...。
『どーみても飲んでた顔つきじゃねぇだろ。
すぐ30分後に仕事に出てるって書かれてるし…オールで飲んでたならそうはならねぇだろ。』
『じゃぁ…滞在していたホテルから一旦帰ったとかなんとかでいいじゃない。』
私はスコットの説得力のある言葉に、ただただ、ため息をつくばかりだった。
『とりあえずしばらく彼氏とは会うな。』
呆れ顔でスコットはそう言った。
『わかってるよ。
もうしばらく家では会ってないもん。』
『家で…だけじゃなくてな。』
こうなるとスコットは引き下がってくれなさそうだ。
明後日のライブに顔を出したかったが、どうやらそれも無理そう。
…ノブがうまいこと言ってくれるような気もしないではないが、ついため息がこぼれる。
『あ〜もう、わかったって!
ノブ‼…ってことだから明後日のこと、ヤスによろしく言っといて…。』
私はスコットにそう言って、そのまま助手席に座るノブにそう伝えた。
せっかく大事なライブだというのに応援にすら行けないなんて…。
「でもソフィー、ちゃんとヤッさんと話さないと、本当そのうちダメになるぞ?」
私はノブのその言葉にどうしても否定ができなかった。
「わかってるけど…スキャンダルはやっぱり困るんだよ……。
ブラストのことだってあるし…シナモンズやブラストの足枷にはなりたくないから…。」
急に、シナモンズのソフィーというロボットに戻ってしまった私はノブにそう言って、その雑誌を見つめた。
結局その後、雑誌についてプチ会議をした結果、”恋愛ぐらいしてないといい歌は歌えない”で突き通せと指示された。
すごく強気な説明だが、すごくいい言葉かもしれない。
だけど現実はそう簡単にはいかず、その夜家に帰ろうとするとマンションの前にはたくさんの記者が居て、私は急遽ホテルに泊まることにした。
『明日、ソフィーの家に寄って適当に荷物を取ってくるから。』
そう言ってスコットは私をホテルの部屋に一人残した。
ノブのバイトは明日で終わり。
明日はノブのお疲れ会のためにケーキを買いに行く予定だったのに…この様子だとケーキは買いに行けなさそうだ。
そして、携帯にメールが入っていることに気がついた。
《なんか俺のせいでごめんな。
ノブにしばらくソフィーが俺と会うなって言われてたって聞いたけど…落ち着いたら連絡くれ。》
私は携帯をベットの上に放り投げ、冷蔵庫のお酒を開ける。
……久しぶりに飲んだお酒はなぜだか昔よりも美味しく感じた。
ねぇヤス……私はシナモンズの…父の……歌うだけのロボットにはなりたくないよ。
翌朝、思った通り二日酔いになってしまった私。
私はホテルを出る前にミネラルウォーターを飲み、ホテルを出た。
『今日は久しぶりにトラネスと…雑誌の対談企画だ。
表紙の撮影もあるぞ。』
「トラネスか…。」
そう、小さく呟いたノブ。
タクミとはやっぱり気まずい関係なのだろうか。
『いいかソフィー、相手を聞かれても答えるなよ。』
念を押すように言うスコット。
『わかってるよ。』
私はスコットにそう言って、ネイトの隣を歩く。
控え室に行くとすでにトラネスのみんなが揃っていて、賑やかな控え室になりそうだ。
「久しぶりソフィー‼」
そう言ってハグをしてこようとしたレイラに、私は気づいてないフリをして、サッと握手の為の手を差し出した。
「ひさしぶり。」
ついこの前、ナナに服を捲られたことをまだ引きずってるのもあるが、それよりもヤスとレイラの関係を知ってしまった私は、レイラを友達とは思えない。
......レイラはただの同業者だ。
そう自分に言い聞かせてレイラのことは頭から追い出したが、バニラ系のレイラの香水は、ずっと私の鼻をくすぐる。