like a rainbow

□ずっと...
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『オーストラリアで野外フェスの依頼が来てるぞ?

...しかもフェスの大トリだ‼』


ノブがシナモンズのバイトになって5日ほど経ったある日のことだ。

ハンターとネイトの書いた曲の手直しをしている最中、上機嫌で部屋に入ってきたスコットが私達に言った。


一応日本が拠点な為、ちょっとした番組やラジオなんかは有無を言わずに断るスコットだが、フェスの大トリとなると流石に私達に尋ねてきた。


『やっぱシナモンズとなると野外フェスにも呼ばれるのか...』


すぐ隣で作業をしながらもそう呟いたノブ。


ノブはアルバイト2日目辺りからメンバーの前では英語で話すようになっていた。

ノブ曰く旅館の跡取りとして英会話を習っていたらしく、発音こそ微妙なものの充分伝わる英語を話している。


『フェスか〜......どうするソフィー、ネイト。』


リーダーであるハンターが私とネイトに尋ねる。


『私はどっちでもいいよ?

CD出すのもその頃だし、プロモーションには丁度いいかもね。』


『俺は賛成。

いくら日本が拠点だからとはいえ、再開後一度も日本から出ねぇのもどうかと思うぞ?』


そう言ったネイト。


その言葉に私とハンターは2人同時に頷いた。


『...じゃぁ、ウィルソンさんに連絡してみるな。』


そう言って再び出て行ったスコット。


きっと父に電話をしに行ったのだろう。


『なぁ、ウィルソンさんって?』


ノブは不思議そうに私に尋ねる。


『あ〜...私の父親だよ。』


『で、シナモンズのプロデューサー兼社長。』


そう口を挟んだのはハンターだった。


『プロデューサー兼社長って...ソフィーの親父さん、そんなすごい人だったのかよ‼』


ノブは驚いたような声で私に言ってきた。


『驚くのはいいからね、仕事しよ、仕事‼』


私はそう言って話しの軌道修正をさせる。

だけどそんな自分のズルイやり方に、胸がチクリと痛んだ。



その数日後、シナモンズは3人は揃って都内の和太鼓教室へと来た。


せっかく日本で活動してるんだから、例の野外フェスに向けて日本らしい曲を作れと父に言われたからだ。


なんでも色んなことをさせたがる父。

そりゃあもちろん野外フェスで和太鼓なんてインパクトはバッチリだと思うけど…。



そう思いながらもバチを握る。

…が、これはかなり腕にきそう。


…普段からドラムを叩いているネイトはすでにコツを掴んだみたいだが、私とハンターは四苦八苦しながら基本動作を覚えた。


『ちょっとすみません。』


練習中、邪魔にならないぐらいに小さな声でそう言ってノブは携帯を持ったまま廊下へと行った。


そしてちょうど私たちの休憩中に帰ってきたノブ。


「何か用事あるんだったらスコットに外出許可貰えば?」


「あぁ〜なんて言うか…奈々ちゃん?
実は俺、こないだ告白したんだけど…昨日変に別れちゃっ「えっ⁉

でもハチって…タクミとなんじゃないの⁇」


私がそう言うとノブは複雑にも笑っていた。


三角関係ってことか。


ハチもハチで何してるんだか…。

でも、私が言えることじゃないもんな……。



その日の夜はメンバーと食事をしながら和太鼓を取り入れた曲のアイディアを出し合った。


そうしていると私の携帯電話が鳴り出す。


『ちょっとごめん。』


私はそう言って席を立ち、電話に出る。


発信者はヤスだった。



「もしもし?」


「おまえ忙しすぎだろ。
ノブに聞いても仕事仕事って。」


ノブに聞いたのか…。

確かに毎日のようにノブにはヤスが寂しがってるなんて言われてた。


「ごめん。」


「今夜は予定がないってあいつに聞いたんだけど…」


「あぁ……うん。どうしたの?」


「…用がなきゃ電話しちゃいけねぇのか⁇」



そう言ったヤス。


気づけば私はそのまま荷物を持ってお店を飛び出し、タクシーの運転手さんにヤスの家の住所を伝えていた。




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ねぇヤス。


あの時私は”貰ってやる”の一言がなんとなく照れ臭くて。

つい”そんなんじゃない”って言っちゃったけど、本当は本気で嬉しかったんだ。

……だからこそレイラの話を聞いた時は本当にショックだった。


でもきっと、黙って出て行った私にはどうこう言う資格はないんだよ。

だからこのモヤモヤとした気持ちは、胸の奥にしまっておくね。




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