like a rainbow

□出会い
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どうやらオーストラリアのパパと連絡が付かず、私は独りになってしまったみたいだ。

あたしはママのお葬式にも…
...というか、ヤスの部屋から一歩も出なかった。


数日前、私をしつこく迎えに来る大人をヤスが追い払ったのをたまたま2階の窓から目撃していた。

だから本当に限界なんだろう。


「......分かった、ありがとお。」


これ以上、ヤスとヤスの両親に迷惑をかけるわけにはいかない。


「"ありがとう"だ。」


どうやら"ありがとお”がクセになってるみたいだ。

ヤスは私にそう言うと、私のことを抱きしめながら、イヤフォンの片方を奪った。


「またTrue Colors??」


「そう。

ねぇ、シナモン入りのホットココアが飲みたい。」


そう言うとヤスはマグカップを持ってきてくれた。

もちろん中身はシナモン入りのホットココア。


学校へ行ったヤスはその日、家に帰ってきた時にとある男の子を連れて来た。


「 ソフィー、こいつはレン。

ソフィーと同じ施設だよ。」


「さすがヤス。いい女連れ込んでやんの。」


「別に連れこんじゃねぇよ。」


レンの言葉にヤスはそう言った。


今思えばこの二人は中学生の頃からこんな調子だったね。

これが...レンと私の出会い。



その日から施設に行った私は、慣れない部屋で眠れない夜を過ごした。

朝、私は真っ赤な目をさせたまま久ぶりに学校へと向かう。


もうこれまでみたいに好き勝手に学校はサボれないし......学校に行かなきゃきっとヤスが心配する。


だけどその日は結局、授業もロクに出ずに屋上で眠った。

ヤスは私に私の大好きな歌を歌ってくれて、私はそんなヤスの子守唄で眠りについた。




「おいヤス‼
こいつらアルトとタイガな!!

こいつらもメンバー探してたらしーぜ‼‼」


私はいきなり屋上の扉を開けてそう言いだしたレンによって起こされた。


「ヤス...?レン...??」


「あ、ソフィーも居たのか...まぁいい。
アルトとタイガがよ...」


そう言ってレンは屋上にさらに2人の男の子を連れて来た。

これが私とアルト、タイガとの出会い。




「ねぇ、とりあえずTrue colors歌おうよ‼」


「あ…True colorsと言えばソフィー、これ、引っ越し祝いにやるよ。」


そう言ってヤスは自分のカバンから、True colorsの収録されているCDとCDプレイヤーをくれた。


「いいの!⁉」


「つーかソフィー!
True colorsよりTime after timeだろ‼

いや、それよりSex pistolsだろ‼‼」


それから私はヤスとレン、アルト、タイガで組んだブルートというバンドに入り、歌っていた。


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ねぇレン、私は今でも思うんだ。

もしまだ私が日本にいて、レンやヤスのそばにいたなら…

レンはトラネスに所属することもなく、ヤスもブラストには入らなかったんじゃないかって。


そしたら私はずっと二人のそばで、ずっと二人を独占して…二人の演奏で歌い続けてたんじゃないかって。



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1年経った頃、せっかく出来た軽音楽部には入らず、私達は月に2,3回のペースで近所のライブハウスでライブをしていた。


なにより軽音楽部を発足させた部長の番長は毎日のようにバットで学校の窓ガラスを割るような人で…なんだか怖かった。


「ねぇレン、なんで私にココア買ってきてくれなかったの?」


中2の冬になる頃、私の一番近くにいるのはレンになっていた。

いつからだったかわからないけれど、気がついた時にはヤスがいた場所にはいつもレンが居た。


「てめぇで買いに行けよ。
こんなクソ寒ぃのに自販機なんか行ってられっか!」


「どうせ誰かさんのせいで教室の窓はないんだし、外も中も大して変わらないでしょ?
レンなんか嫌い!!ヤス、一緒に買いに行こう⁇」


私はヤスの腕を掴んで自販機の並ぶ渡り廊下へと向かう。


途中で軽音楽部の子達とすれ違ってふと気がついた。

そういえば最近、番長のバット姿を見ていない。


「あ〜ぁ、自販機のココアにもシナモンが入ってればいいのに。」


「ソフィーは本当好きだよな、シナモンココア。」


そう言って笑いながら「便所行ってくる。」と言って、私を残して何処かに行ってしまった。


一人残された私はココアの缶を開け、True colorsの鼻歌を歌いながら渡り廊下にもたれかかって下を見下ろした。
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