暗闇の先に
□28,知らぬ間に
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「リックとミショーンが到着した。」
あれからアレクサンドリアの住民全員がここでの仕事を割り振られ、私が診療所で怪我をした多くの人達の手当てをしていると、見張り番をしていたはずのダリルがトレーラーに飛び込んできて言った。
ヒルトップの医師であるダナは私とセディクに視線で合図をし、私達が持ち場を離れることを許す。
私達が外へ出るとリックはキャロルからジュディスを受け取り、リックはただただジュディスを抱きしめていた。
そんなリックの行動に、どこか嘘だと思いたかったカールの一件が現実なんだと痛感させられる。
......本当にカールは..........
私はただその場に立ち尽くし、悲しみを受け止める。
「ドワイトがサンクチュアリに。
タラとロジータが言うには、サンクチュアリから逃げ出したゲイブリエルとカーソンを探す救世主を俺たちから遠ざける為に戻ったらしい。」
ダリルはリックにドワイトのことを話した。
「リック、落ち着くまで私たちで戦う。
リックは少しゆっくり過ごして?」
リックがヒルトップに到着したと聞きつけたマギーがやって来て言った。
「いや、いいんだ。大丈夫だ。
マギーこそ、体を大事にしろ。
...外に見張り番が。」
「半マイルおきにだろ。」
ダリルはリックの気持ちを汲み取り、そう言った。
「俺も外に。襲撃に備える。」
「一緒に行く。」
ダリルはリックにそう言った。
今、リックは落ち着いているみたいだけど、カールを亡くした直後だ。
ローリの時のことを思い出すとすごく心配だが、ダリルが一緒なら安心だ。
上手くフォローしてくれるだろう。
診療所に戻る途中、手紙を持って涙を流すイーニッドとそれを支えるミショーンを見かけたが、私はそのままスタスタと歩いて診療所へと戻った。
カールと仲良くしていたイーニッドも、すごく辛いだろう。
私は......そんなみんなに何ができる?
どうやってみんなを笑顔にできる⁇
みんなにかける言葉が見つからない。
......ねぇカール、あなたがいなくなって、本当にみんなが悲しんでる。
みんな、あなたが大好きだったから...。
もう、ローリには会えたかな?
きっと驚くよ。
あんな小さかったカールがここまで大きくなったんだもん。
ジュディスの話し、いっぱい聞かせてあげてね。
夕方、私とダナが住民の病歴に関する情報を交換し合っていると、今度はマギーが診療所にやってきた。
「メイ、少しの間、ジーザスと見張りを頼めない?
イーニッドとミショーンとロジータと私で行きたいところがあって。」
「もちろん。すぐ行くね。」
私はセディクとダナに断りを入れ、情報交換会を抜け出す。
私が見張り台の前まで行くと、すでにジーザスは見張り台へと登っていた。
「メイ、これ、あんたに。
用が済んだらすぐ戻る。」
今にも出発しそうな車の運転席にいたミショーンは窓を開けてそう言い、私に封筒を渡して出発した。
「やぁ。」
車を見送った後で私が見張り台に登るとジーザスは隣を空けるように奥へ寄ってくれる。
私はたった今渡されたばかりの手紙をウエストポーチにしまい、ジーザスに挨拶を返した。
「それ、読まないの?」
「今は...いいかなって思って。
みんなはどこに?」
私はそれ以上この手紙について何か言われないように、話題を変える。
手紙を読むのは一人のときにしたい。
ダリルさえもいないところで。
「何か取引があるみたいだ。
救世主じゃない、誰かと。」
その言葉を聞き、私は驚いた。
「それって...リックは知ってるの?」
「さぁ。
たぶん知らないんじゃないかな?」
ジーザスのその言葉を聞き、私はため息をこぼした。
もし何かあったらその時はどうするつもりなのだろうか。
4人で行ったからといって、トラブルに十分対処できるかはわからない。
「一つだけいいかな?」
私がマギーたちの行動に疑問を抱いていると、再びジーザスは私に言った。
「すまなかった。
君が、サンクチュアリに居ると知った時、君を助けに行けなくて。
仲間を助けに行くのは当然のことなのに...自分達のことに必死で、その余裕がなかった。」
何を言われるかと思い、斜に構えてしまったが、そんな必要はなかったみたいだ。
「大丈夫。
もしあなたが来てくれたとしても、あの時の私はうまく切り抜けることができなかったと思うから。
気持ちだけ...受け取るわ」