暗闇の先に

□26,変化の時
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私も着替えを済ませてリビングへと行ってみたがすでにみんな出かけたらしく、家には誰も居ないようだった。

私は昨日の残り物のスープとパンで軽い朝食をとり、家を出る。


「おはようメイ。」


外で顔を合わせたのはジュディスと遊ぶアーロンだった。


「アーロン、ジュディス、おはよう。」


もしかしたらアーロンは私に気を使って外に居たのかもしれない。

ダリルと仲のいいアーロンはきっとダリルから色々と聞いているだろう。


「私ちょっと...診療所に行ってくるね?

二人のお見舞いと、様子を見てくる。」


私はそう微笑み、道の端っこで小石を集めているジュディスの頭を軽く撫で、今度こそ診療所へと向かった。


「メイ!」


私が診療所の扉を開けると私の名前を叫びながらながら身体を起こしたのはミショーンだった。


ミショーンは園芸の本を読んでいたみたいだが、本はすぐに閉じられた。


「久しぶり。
もっと早く来るべきだったんだけど...私も少し体調がすぐれなくて。」


私は素直にそう言った。


「間違ってた。あいつについて行くなんて。」


ミショーンは鋭い目つきで私の瞳を捉えながら言った。


「そうだったかも知れない......だけど私にはそれ以外の選択肢が無かった。

私が従わず、家族の誰かが辛い目にあうなら自分が犠牲になった方がマシ。

それに私は...ダメなの、あぁいうタイプが。
父の......ヒロシのこと、覚えてるでしょ?」


私はミショーンに言う。

だけど彼女は未だに私の目を捉えて離さず、納得していない様子だった。


「アンタの性格は充分知ってるよ。

でも、メイが行ってしまった事で人一倍辛い思いをした人がいる...メイよりもね。」


私はその言葉をしっかりと受け止めた。


「わかってる。

...ちゃんとわかってるよ。


ここに戻ってから、ずっと感じてる。」


私はミショーンに頷きながら答える。

その途中で鼻がツーンとなるのを感じ、必死で堪える。


「忘れちゃいけないよ。」


最後にそう言ってくれたミショーン。


その言葉に彼女らしい愛を感じた私はミショーンの傷に触れないよう、優しくハグをした。

それから私はミショーンとロジータの手当てをし、私は食料庫へ寄っていくつか食材を拝借してからアーロンとジュディスの居る家へと帰った。


リックやカールが出かけ、ダリルが町の見張りをしてるってことは今日の食事当番は無条件に私だろう。

カールとジュディスが昨日作ったパンが少し残ってるし、シチューなんてどうだろうか。




「メイ、ちょっと出かけないか?」


ある日ダリルは外で農作業をする私に声をかけてきた。


私は町の役に立つため、畑を広げようと農作業に精を出していた。


ダリルはというと、ここ数日は襲撃の準備で毎日忙しそうにしている。

でもそれはダリルだけじゃなく、みんながそうみたいだ。


「出かける?準備をサボっていいの ⁇」


「あぁ、行きたいって言ってたろ?」


その言葉に私はピンとくる。


「もしかして、キャロルのとこ?」


「あぁ、ちょっと寄り道もするがな。」


ダリルの言った寄り道という言葉に私は眉を寄せる。


「大丈夫だ。もう一つのコミュニティに行くだけだ。

もし嫌ならキャロルの家で待っててもいい。」


私はその言葉に頷く。


「平気……じゃあ、ダリルはバイク出しといて?

スコップを片付けてくる。」


私はそう言ってダリルに微笑んだ。


私が外に戻るとダリルは自分のバイクの後ろにクッションを乗せていた。


「行けるか?」


その言葉に頷いたダリルは私をひょいと持ち上げ、クッションの敷かれた後部へと乗せる。



そのあとでダリルは自分もバイクにまたがり、アレクサンドリアを出発した。

久しぶりの壁の外、彷徨うウォーカー、バイク旅を楽しんでいるとダリルは一度バイクを止め、エンジンを切った。


「ランチタイムだ。」


そう言うとダリルはバイクバッグの中から紙袋を取り出し、近くにある木の陰に座った。


私は辺りを見渡しながらもダリルの隣に座る。


こんな風に外でダリルと2人きりになることはすごく久しぶりで、なんだかすごく照れてしまう。


ダリルは自分のポケットに入っていた水筒を私との間に置き、紙袋の中からサンドウィッチを取り出すと私に差し出す。

「ほら。」


そう言いながら素っ気なくサンドウィッチを渡すダリルに私は微笑み、ありがとうと言って受け取った。
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