暗闇の先に

□25,精一杯
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数日後、リックや他の仲間と共にとあるコミュニティに行った帰り、俺は久しぶりにアレクサンドリアへと戻った。


アレクサンドリアで奴らと武器の整備や武器の配分を考えることを頼まれた俺。

リック曰く俺がここにいることがバレたとしてもそれはそれで戦う口実になって都合がいいらしい。


とにかく今はバレるかどうかよりも戦いの準備のほうが大切みたいだ。


アレクサンドリアの門へとたどり着くと門を開けたのはロジータだった。

ジーザスによればサシャとロジータは2人でサンクチュアリに行ったと言っていたのに彼女はなぜ戻ったんだろうか。

…もしやここにあいつらがきてるのか?


不安になった俺は辺りを見回してみるがどこにも奴らの車はなさそう。



そうしている間にもロジータはリックに着いてくるよう指示を出す。


彼女はモーガンが作った牢へと俺たちを連れて行き、牢の扉を開けるとそこにはドワイトがいた。


列の後ろの方にいた俺はナイフを構えて奴に向けるが、リックやミショーンによって俺の動きは止められる。


「落ち着け。」


「協力したいって。」


ロジータはそう言った。


いくら協力したいからといってこんな奴信用するわけにはいかない。


「本当か?協力したい⁇」


「そうだ」


「わかった」


奴の言葉を受け止めたリックだが、リックはすぐに銃を構えた。


「ひざまずけ、俺を見ろ。なぜだ?」


「終わりにしたい。ニーガンを殺したい。」


「自分で殺せ。」


「あいつら全員がニーガンだ。」


ドワイトは最もなことを言った。


あいつらは全員ニーガンを名乗ってやがるのは確かだ。

俺もニーガンを名乗るようにとしつこく言われていた。


だが俺らが標的としているニーガンは革ジャケットを着た野球バットを持ったニーガンだ。


「あんたが殺した子には名前があった。
デニスは医者で人を救ってた。」


今度はタラが口を開く。


デニスのことは俺が外に連れ出したのが間違いだったんだ。

…せめて外に出るための訓練をするべきだったのに。


「狙いは違った。」


悪びれもしないドワイトのその言葉に俺は今度こそドワイトを壁に押し付け、ナイフを鼻先に向けた。


「やって。やってよ。」


タラは煽るように言う。


「これでいいならやればいい。
悪かった本当に。やりたいんだろ。」


だがドワイトは意外にも素直だった。

人間の心を持っていなければこんなことは言えないはずだ。


俺がサンクチュアリを抜け出す時に遭遇した男は殺されることを避けようと最後までブツブツと何かを言っていた。

でもこいつは違う。


「お前を探しに来たのかも。」


「ワナだわ。」


リックとミショーンは言う。


「弱みがあった。だがもう違う。
俺がしたことはある人のためだった

彼女は出てった。
だからここへ彼女のおかげでお前も出られた。

俺は信用されてる。協力すれば止められる。

あの時の俺と変わっちゃいないんだ。
ウソじゃない。」


弱み…か。


だがこいつが彼女を探すよりニーガンを殺すことを選んだことは納得いかない。

俺なら一番に彼女のことを考える。


「やって。やってよ。」


だがまぁ、ドワイトがニーガンに恨みがあることは確かだ。


そう考え直した俺はドワイトに向けていたナイフ下ろした。


「ユージーンはどうしてる?メイは⁇」


俺は一番聞きたかったことを聞いた。


ユージーンのことはさておき、メイはどうしてるだろう。


リックやジーザスはVIP待遇を受けているといったが、それは本当なのだろうか。

メイは俺の時みたいな辛い仕打ちを受けていないだろうか。


「2人とも上手くやってる。

ダリルの時とは違う。
ユージーンはニーガンのアドバイザーを、メイはシェリーの代わりに、妻としていい暮らしをしてる。」


俺はただ頷いた。


いい暮らし。

だが引っかかるのは妻として、という部分だ。

俺の時のような仕打ちを受けていないとしてもメイにとっては十分すぎるほどの苦痛だろう。


「サシャは奴らに捕らわれてる」


ロジータは言う。


でもなぜ彼女だけ?

ロジータも一緒に行ったはずだ。


「もっと早く言え。彼を使えるかも。」


「信用できないけど、ダリルを信じる。」


ロジータは言った。


俺が信じたのはいつかこいつが見せたシェリーに対するあの目。

シェリーのことを俺に話した時のこいつの目はらしくない目をしていた。
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