暗闇の先に

□24,一番の近道
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✳✳✳ダリルside✳✳✳


ジーザスに言われるまま王国へとやってきた俺達はエゼキエル王に会い、一緒に戦うよう説得をしたが、彼が頷くことはなかった。

みんなあいつに苦しめられているというのに従う事を選択している。

みんなで結託すりゃ結果は明らかなのに...だ。


まぁそうなる予感はしていたし、俺たちだけででも戦うしかない。

モーガンと、キャロルと......メイを除いたアレクサンドリアとヒルトップの一部の住民達で。


いや、でもやっぱりどうにかしてメイを説得させなきゃなんねぇな。


「開けろ出てく。」


考え事をしながらも門の前へ来た俺は王国の門番にそう言った。


「残れ。」

その言葉を聞き逃さなかったのはリックだ。


「俺も帰る。メイと話がしたい。」


「残る方が得策だと分かってるだろ。
エゼキエルを説得してくれ。
脅して従わせてもいい。

今度は必ずメイを連れて来る。
ダリルがここにいると聞けばメイも来るだろう。

その時に好きなだけ話せばいい。」


この感じ...ウッドベリーの時にメイをすぐに助けに行けなかったことを思い起こされ、妙な胸騒ぎを感じる。


「だけどあいつは...」


リックの言葉に素直に従う気にはなれなかったが、リックは俺にエゼキエル王の説得をさせたいみたいだ。

まぁたしかに、ここの加勢があるかないかで作戦なんかも変わってくる。

もちろんメイのことは大切だが、リーダーであるリックの指示を無視するわけにはいかない。


複雑な立場だがリックの言う通りにするほかないだろう。


「メイを頼む。」


俺はリックにボソッと呟いて足を止めた。


「もちろんだ。」


そしてリックは俺の肩を軽く叩き、みんなを連れて門の外へ、町へと帰って行った。








「メイ、ありがとうな。

数時間だが寝させてもらったよ。」


朝、私とバトンタッチをして仮眠を取りに行ったトビンはお昼過ぎに見張り台へとやってきた。


「大丈夫。

それじゃ、私...「リック達だ。」


そう言いかけた時、トビンが門の外から歩いてくる人影が見つけて私の言葉はかき消された。


こうなる前に...私が町を出にくくなる前に出かけたかったのに。

計画は失敗かもしれない。


トビンは見張り台を降り、歩いてくるリックのために門を開けている。

私もため息を一つこぼして地上へと降りた。


「車は?」


「安全な所に。」


「収穫は?」


リックはトビンの問いかけにそう答える。


「ない。
メイ、話がある。」


リックは少し離れたところにいた私にそう言って手招きをした。


「リック、いくら説得されようと私の考えは変わらない。「いいや。違う。」


「いい?一緒に王国に行くの。

ダリルはあいつの元から抜け出したのよ。」


私とリックの会話に口を挟んだミショーン。

彼女は居ても立っても居られないようだ。


「王国?」


「あぁ。
ジーザスが紹介してくれ...」


その時、遠くの方からけたたましいバイクの音が聞こえてきた。


きっと彼らがきたんだろう。


こうなる前にここを出たかったのに。

また彼らを見る前に......。




「リック、よう。また会えたな。」


ニーガンの右腕のサイモンと呼ばれる男がリックに言った。


「早すぎる。」


「徴収に来たと思ってるのか?」


「他に理由が?」


「あるね。ダリルだ。」


私は彼らの会話をただ傍観する。


ダリル......ダリルは本当にニーガンの所を抜け出したんだ。


「ニーガンの所だろ。」


「あんたの息子が現れダリルが消えた。
何か関連があるね。」


「ないね。消えたと今知った。」


リックの作戦なのか、リックはシラを切るつもりらしい。


「ならすぐ済む。2人1組になれ、案内してもらう。

奴がいたら死にざまを見せてやる。」


そう言ってサイモンは仲間を引き連れて街のいたるところを探しに向かった。



彼らが来たせいでアレキサンドリアから出られなくなってしまった私。


私は仕方なく町の中心地に戻り、池のほとりで腰を下ろして流れる雲が水面に映るのを見つめ、頭の中を整理する。


ダリルが抜け出した。

だけどこの町は救世主の、ニーガンの支配下にあってそれはこれからも変わらない。

隠れながらダリルがここに住むことはきっと出来ないだろうし、いつその王国がニーガンに支配されるかわからない。

もうされてるかもしれない。


私はどうすればいい?
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