暗闇の先に
□23,一番大切なもの
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私が着ようと持っていたTシャツを奪い、服を椅子の背もたれに掛け、テーブルに置いたままのテーピングテープを取り、途中だったテーピングの続きをしてくれる。
「こう見えてテーピングは得意なんだ。
それで...このクールな傷跡は?」
ニーガンは私の肩の傷跡に触れて言った。
「前に銃弾を掠めたの。」
「前に?」
ニーガンは今もテーピングをしてることを不思議に思ったのだろう。
「前に痛めたところを...さらに痛めちゃって。」
「それじゃ......こっちは⁇」
自分で言っていた通り、手際良くテーピングを済ませてもらうと、キャミソール姿ということで体に残る傷跡を見つけられた。
「これは.........この世界になる前のもの。」
私は静かに言った。
この世界になる前、父に付けられた無数の傷。
消えて無くなったものもあれば、今もずっと残っているものも沢山ある。
「そうか。
あぁ〜それで......リックは?」
今度は後ろにいるオリビアに尋ねるが、オリビアは少し吃ってしまった。
「さっさと言え。」
「リックはあなたのために調達へ。」
前回オリビアはあんな目にあったのだから仕方がない。
「そうか、待とう。」
「遠く行ったから今日は戻らないかも。
物資が不足してほぼ飢餓状態よ。」
「君が?"ほぼ"って事はそうでもないな。」
コーテーションマークのジェスチャーをしながら言ったニーガンにオリビアは泣きだしてしまった。
「なんだよユーモアのセンスもないのか。
なぁ、名前はなんだっけ。」
「オリビアよ。」
「そうだった、オリビア。
失礼なことを言ってすまなかった。
しばらくここで勇敢なリーダーの帰りを待つ。
もしよければ君に突っ込めたら楽しいと思うんだが君さえ同意してくれれば...」
その言葉に怒ったオリビアは彼にビンタをする。
確かに今彼が言った言葉はよくないが、他の人ならまだしも彼にビンタをするなんて......。
そしてニーガンはオリビアの耳元で何か呟いた。
その言葉を聞いて息を飲んだオリビア。
一体彼は何を言ったのだろうか。
「真に受けるな。
俺の物が到着するまでくつろぐとしよう。
オリビア、レモネードを作ってくれないか?
粉ジュースが残っているだろう。」
ニーガンはオリビアに言った。
「だけど私は今から...「作れ!作れ。
ゆっくりでいい、うまく作れ。」
その言葉を聞いたオリビアは走って出て行く。
私は椅子の背もたれに掛けられた服を手に取った。
「まてまて、ジャップ、言ったろ?女性は薄着の方がいいって。
その背中のクールな傷跡の話を聞かせてくれよ。」
私は持っていたTシャツを着てゲイブリエルを探しに行こうとしたが、ニーガンは私を自由にさせるつもりはないようだ。
「全然クールなんかじゃない。
最低の父親を持ったってだけの話し。」
「クールじゃないか‼
男かと思いきや父親だって⁇」
ニーガンはそう言ってニヤリと微笑んだ。
「よし、二人とも家を案内してくれ。」
それから家にあるパターゴルフやダーツをして遊び、エアコンや水道などの設備を楽しそうに見て回るニーガン。
ほとんどの案内はカールがした為、私はただ着いていくだけだった。
「ここは?」
ほとんどの部屋を見て回り、最後にたどり着いたのはジュディスの居る部屋だ。
「給湯器が...「ごまかすな。
おぉ〜...驚いた、小さな天使がいたぞ。」
カールの言葉には耳を貸さず、扉を開けたニーガンはジュディスを抱っこする。
どうやらお昼寝から起きていたみたいだ。
そして今度は3人でポーチへと移動する。
キャミソール姿で家の外なんかに出たくなかったけれど、Tシャツを着ることは禁じられてしまった為、なるべく人に見られないよう、壁にもたれて立った。
ダリル以外の男の人に見せたことなんて無かったのに...。
「なんて可愛い子なんだ。」
ニーガンはそう呟きながら椅子に座って体勢を整えた。
ニーガンの正体なんて知らないジュディスは緊張感もなく、むしろなんだかまだ少し眠たそうだ。
「ご近所さん、後で寄ってくれ食事でもしよう。
ここが気に入った。俺も住んでみようか。」
その時たまたま通りかかった町人に声をかけたニーガン。
「さっきのことを考えてた。お前やパパを殺すべきかな。
苦労する必要があるか?お前たちを花壇に埋めるべきかもしれない。
郊外の暮らしもいい。どう思う?」
2人はよく分からない話をしている。