暗闇の先に

□22,交わした誓い
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「メイ、悪かった......だけど僕は物資を守りたかったんだ。」


そう言って私に寄り添ったカール。


「わかってる。......カールは悪くない。
誰も悪くない。

ダリルだってエイブラハムだってグレンだって悪くない。

だけど従わなくちゃいけない。
理不尽でも、ああいうタイプの人には...」


私は込み上げて来るものを抑え、静かに話しはじめる。


「カールには話した事なかったけど、私の父も...ヒロシもあぁいうタイプの人間だったの。」


ダリルしか知らない、私の幼い頃の話。

リックには父を殺した事は話したが、理由までは話していない。

カールに話して何になるのかはわからないが、もう私の口は止まらなかった。


「あの人はお酒が入るといつも私や母を傷つけた。

ある日母と父は離婚し、母はこっちの人と再婚して、私と母はこっちに移り住んだの。

だからあの日、ウッドベリーで再開した時はすごく驚いた。

でもやっぱり私は...どうしてもあの人を信じられなくて、再会してすぐ手錠をつけた。

あぁいう人間には従うしかないの...時期が来るまでは。」


私は必死に感情を殺して隣に座るカールに話した。


「時期?」


「そう......私は総督との決戦の翌日、父をこの手で殺した。

あの人が酔い潰れ、私に罵声と手をあげた後でね...殺したのは私なの。」


「ねぇメイ...だけどやっぱり納得いかない。」


カールは自分の考えを曲げない。


「......納得いかなくても今は...「メイ、カール、今すぐ教会に集合だ。」


その時、リックがやって来て言った。


「うん。すぐ行くよ。」


私は深呼吸をしてリックに答える。


「...カール、今は目の前の課題をクリアしていかないと。」


私はそう言って無理に微笑み、カールより一足先に教会へと向かった。





「銃を隠そうとも思った。
前はそうした。

壁の外に埋めておけば何年も保管できる。」


「何年も?」


町の人たちがみんな集まるとリックはスピーチをはじめた。

一番後ろの席に座った私は、みんなの様子がよくわかる。

みんなのピリピリとした空気や、救世主達への恐怖心やリックへの不信感。


そういったものが感じられた。


「あぁそうだ。
だが救世主に見つかったら?
持ってるの見られたら?

誰かが死ぬ。
大勢が死ぬかもしれない。
弾をいくつ持ってても十分ではない。
奴らが勝つのは明らかだ。
いくつか銃を隠しても意味はない。
イヤだろうが渡すしかない。

グロック9と22口径、それを探している。

誰が持っているか知っている者は?
なければオリビアを殺す。必ずだ。」


オリビアが殺される?


「たった2丁だ。奴らの脅威にはならない。
だが俺たちの身を守れる。」


町人の1人が立ち上がってそう言った。


確かにそうだ。


二丁の銃があれば、ウォーカーからは身を守れるかもしれない。

...だけど人間からは守れない。




「あそこで起きたことを見ずに済んでよかった。

だが今は目を背ければ誰かが死ぬ。
奴らに従えば静かに暮らせる。」


その時、アーロンとエリックが何やらボソボソ話し始めたのが気になった。


「よせ今はダメだ。「今だよ。
見つかったら状況が変わるのか?」

エリックはアーロンの反対を押し切り、的確な言葉を発した。


「状況は変えられないからこれだけははっきりさせておく。
......ボスは俺ではない、ニーガンだ。

銃は誰が?」


リックは再び町人達に言い聞かせるように言った。


「いない人が。」


ユージーンは辺りを見回してからそう言うと、リックはすぐにその場を立ち去った。


ここにいない人って......ミショーンとロジータとスペンサー⁇

ロジータとスペンサーはダリルのバイクを探しに行ったから居なくて当然だろうけど、ミショーンとスペンサーはどこに行ったのだろう。


「手分けして探そう。」


アーロンはそう言って立ち上がり、リックよりも先に教会を出た。
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