暗闇の先に

□21,最悪の一日
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「最悪だろ、お前は何も知らなかった。
お前のガキか?」


ニーガンはカールにルシールを向けながら言う。


「やめてくれ!」


だが、声を発したのはリックだった。


「未来の殺人者を殺さないでくれ。

これじゃ簡単すぎる、誰かを選びたい。
俺の”注文”をみんなが待ってる...」


そう言って再び口笛を吹くニーガン。


「決められない。」


そう言って彼は頭を抱えた。


「こうしよう。」




「だ...れ...に...」


「し...よ...う...か...な...」


リック、マギー、エイブラハム、ミショーン、グレン、ダリル、マギーと、順番にルシールを向けながらそう呟きはじめたニーガン。


あぁ......

もう.........こんなのって.........。


さっきからずっと、手の震えが止まらない。

ダリルが私の手を握ってくれていたのがもう随分前の事に思える。


ただ、冷静さを取り戻すために目をつぶった。


「か...み...さ...ま...の...」


「い...う...と...お...」


今度はサシャ、アーロン、ユージーン、私、カール、リック、エイブラハム、サシャ、ロジータにルシールを向ける。




グレン、マギ ー、ユージーン、サシャ、ロジータ、アーロン、エイブラハム、ダリル、ミショーン、私、カール......


そして......


「り...」

ニーガンは最後にエイブラハムを選び、呟いた。


「誰かが騒いだらガキのもう片方の目を親父に食わせてやる。

息をしてもまばたきしても、泣いてもいい。

まぁ全部やるだろうよ。」


その瞬間、エイブラハムは有刺鉄線の巻かれた物騒なバット...ルシールで殴られるがすぐに起き上がった。


「やるじゃないか。根性がある。すげぇ。」


そう言ってニヤリと笑ったニーガン。


「しゃぶれ…俺の……タマを」


エイブラハムはそう吐き捨て、次の一発で地面に倒れ込んだ。


その後何度もバットで殴りつづけるニーガン。

目をつぶったところで、グチャ...グチャリと、彼がエイブラハムを殴り続ける音が聞こえる。


「聞いたか?”俺のタマをしゃぶりやがれ”だと。」


突然、私の頬に手が触れるのを感じ、私は目を開ける。

彼は私に話しかけていた。


「全く最高だぜ。これを見ろ俺の可愛い子がびしょ濡れだ。なぁよく見てくれよ。」


今度はロジータにルシールを見せた。


「まいったな、奴とそういう仲か...最悪だな。

だが分かるだろ、なぜこうなったか。
赤毛はいつにも増して真っ赤になった。

お前らのために犠牲になったんだ。
分かったならよく見やがれ。見るんだ。」


ニーガンはそう言いながら再び私の前にやってくると、私の頭を持って私の顔をエイブラハムの遺体に向けさせた。



私が心のスイッチをオフにしかけたその時...ダリルがニーガンに殴りかかろうと列を飛び出した。

救世主メンバーは3人がかりでダリルを押さえつける。


「ダメだ!ダメなんだよ今のは…
まったく…今のは全然ダメだ。

その態度はここじゃ通用しない。」


ニーガンがそう呟くとドワイトはダリルに弓を突きつけた。


「やるか?今すぐ。」


ドワイトのその言葉に私は身震いが起き、涙を流した。

もう十分だ。

...私達はニーガンに従う他ない。

もう十分に分かった......だから...


「いいや…殺しは早い。役目を果たせ。」


そう言われ、ドワイトはダリルを引きずっていく。


「とにかく…ルールを守れ。
さっきも言ったろ、”最初だけは許す”
“次はぶっ潰す”と言った。

例外なくな。

どんなウソつきと出会ってきたか知らんが俺は約束を守る。
第一印象が大事だ、俺を知ってもらいたいからな。
だから…...こうだ‼」


そう言ってニーガンはエイブラハムを殴ったばかりのルシールを持って振り返り、グレンの頭を殴った。


その瞬間、グレンの頭は血だらけになり、目玉が半分飛び出る。

そしてマギーの方を向いてなにかを言おうとした。


「マギー…君を…...見つけるよ。」


「なんだよ…辛いだろうな。気の毒だよ。

本心だ......だが言ったろ。例外はない。」


ニーガンはそう言ったあとでグレンを何度も何度もルシールで殴る。

もう...十分なのに。


「いいか?これはまだ始まりだ。
“ルシール”は喉が渇いてる...吸血鬼バッドだ。

...何だ?キツい冗談だったか?」
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