暗闇の先に

□20,抱えた痛み
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「人質を交換してくれたら大人しく去る。」


リックはポーラと呼ばれるトランシーバーの向こうの女性に言った。


「また連絡するわ。」


だが、相手からそれ以上の返事はなく、トランシーバーの通信は切れる。


「ポーラはどこにいるんだ!

俺らの仲間をどうする気なんだ⁉」


リックはそのまま男の元に行き、ポーラについて問いただす。


「リック、とりあえず二人がいた場所に行こう。

...そこから跡を辿れるかもしれない。」


リックにそう提案する。


跡を辿れなかったとしてもキャロルのことだ。

何か手がかりを残しているかもしれない。



リックは私の言葉に頷き、男を立たせると2人が待機していたところへ向かった。

...やっぱり私も外に居るべきだった。

2人より3人なら......なんとかなっていたかもしれない。


2人が待機していた場所へ行く間、そんな後悔が絶えない。


「...多分これがそうだ。」


1番に足跡らしきものを見つけたのはアーロンだった。


「そうね。」


彼はもう何度もダリルと外に出かけているせいか足跡を見ることさえできるようになっている。


「あぁ、それでどこに続いてるんだ⁇」


リックは男の首根っこを掴みながら言うが、男は答えない。


その時、再び無線が入った。


「クソ野郎、聞こえる?取引することに決めた。

”神は死んだ”という看板が66号線を2マイルほど行った見通しのいい所にある。

そこで10分後に落ち合いましょう。」


そう言って切られてしまった無線。

66号線を2マイル......。


「リック、どうする?」


足跡を追い続けていたダリルだが、無線を聞き、一度中断してリックに尋ねた。


「ミショーン、エイブラハム、ロジータ、サシャ、アーロンはそこへ向かってくれ。

俺とジーザス、ダリル、グレン、メイ、ジーザス、ゲイブリエルで後を辿ろう。」


男を誘導させているリックとダリルの代わりに、アーロンから足跡を追うのを私が引き継ぎ、歩き続けた。


「ここだ。」


そう呟き、リックとダリルの方を向いて頷いた。


「メイ、俺が先頭に行くよ。

...注意して進もう。」


そう言ったグレンは私の前に移動し、扉に手をかける。


だがその瞬間、グレンが開けようとする前に扉は開き、中からマギーが顔を見せた。


「マギー。」


グレンはマギーの名前を呼び、マギーを抱きしめる。


その奥にはキャロルも見えた。

よかった......二人とも無事みたい。


私はホッとして、構えていた銃を下ろした。


「大丈夫か?」


男をリックに任せてキャロルの元へとやって来たダリルは言った。


「いいえ。」


「後を追った。火をつけた?」


ダリルの言葉にキャロルは頷いているが、キャロルは自分がした行動に少し動揺しているみたいだ。


「大丈夫か?」


そんな様子を見てか、ダリルはもう一度尋ねた。

私はそんな二人を見るのがなんとなく辛くて、扉の向こう側へと行く。


「いいのか?」


同じく扉の外にいたジーザスは私に呟いた。


「彼のこと?

良くはないけど......まぁ、家族だからね。」


私はそう呟く。

大丈夫...ダリルにとっての1番は私だって分かってる。

ただ......少しだけ、目を背けさせてほしい。


「君も大変だな。」


ジーザスはそう言って私に微笑みかける。


「そう?この世界で生きてたらこうなるわ。」


そうは言った私だけど、この世界にならなければ私は男の人は苦手なままで、誰かと結婚するなんてことは無かっただろう。

きっとこんな風にジーザスと話すこともなかった。




それから車のところへ戻り、ジーザスに一台の車を渡し、ジーザスと別れる。


「...メイ、乗るか?」


ダリルはバイクの後ろに目線をやり、私にそう言った。

バイクの後ろに乗るなんて、凄く久し振りな気がする。


「うん...乗るよ‼」


私はそう言ってダリルに笑顔向け、そのままバイクの後ろに跨って彼の腰に手を回した。
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