暗闇の先に
□19,新しい世界
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「ねぇダリル、これ......」
すぐ隣にいるダリルのベストを引っ張りながら、足元にあった足跡を指差す。
ダリルは銃を構えながらも目線だけを落とし頷いた。
「リック、足跡がある」
リックを先頭に足跡を辿ると少し先に小さな建物を見つけた。
「中に仲間が!」
小さな会社のような建物だし、中に入っても物資が見つかることはなさそう。
人が逃げ込むにはちょうど良さそうだが...本当にジーザスの仲間が居るのだろうか。
「また爆竹かもしらねぇ。」
昨日、彼とやりあった際に爆竹を使われたと言っていたダリル。
「違う。」
だけど彼は......
「ねぇリック、彼が本当に私たちを殺す気なら私たちみんな、夜の間に殺されてる。
彼は武器庫に入ったのに何も取らなかったのよ?」
リックにそう訴える。
きっと総督や父、ギャレスだったなら...…今も生きてはいないだろう。
「メイ、仲間は助けるさ。
お前はここで待て。」
ジーザスは私を見た。
「仕方ないわ、リックはちゃんと約束を守ってくれる......あなたの言ってることが本当ならね。」
「メイ、こんなやつ信用するな。」
ジーザスと話す私にダリルは耳元でそう呟く。
ジーザスは私の言葉を受け入れたようで、手錠をちらつかせたリックに自分の手を差し出していた。
「マギー、口笛が聞こえたら撃て。」
「わかった。」
どうやらマギーには見張り役としてここに居てもらうみたいだ。
リック、ミショーン、エイブ、グレン、私、ダリルの順で建物の中に入ると一番手前のオフィスルームには男女2人がいた。
「出てきて、大丈夫よ。
ジーザスがいる、助けるわ。」
ミショーンがそう言い、出てきた2人の武装チェックをする。
「他には?」
「奥に2人。」
どうやら女の人は今の状況を理解したらしく、リックの質問に素直に答えている。
それからリックは私やダリル、グレンにアイコンタクトを送り、私たちはそのまま奥へと進んで行った。
途中の部屋はグレンとエイブラハムに任せ、私とダリルはさらに廊下の奥へと進む。
そして部屋の近くに行くと、突然2体のウォーカーに出くわした。
「メイ‼」
ダリルの方にも1体行ったというのに私の心配をしてくれるダリル。
「平気...‼......ほらね?」
少しだけ手こずったものの、なんとか自力でウォーカーを倒した私。
少し違和感はあるけど......この手でもちゃんとやれた。
「ならいい...行くぞ。」
そう言ってダリルはすぐ向かいの部屋の中に入った。
ロッカーの奥に隠れる男が見え、ちょうどロッカーの真ん前にある椅子をダリルがどける。
「行こう、ジーザスがいるわ。」
私がそう呟くと男は恐怖丸出しの顔を少し緩め、立ち上がった。
「仲間を残していけない。事故で怪我してる。」
「もう他の奴らが探してる。全部で4人だろ?
足元に気をつけろ。」
ダリルはそう言うと、元来た廊下を歩いて戻っていった。
全員を助け、ジーザスのところに戻ると、彼は嬉しそうに微笑んだ。
「みんなありがとう。」
ジーザスはそう言った後で私たち一人一人と目を合わせる。
私はいつも人を信用しすぎると言われるが、今回は信用しても良かったみたいだ。
「メイ、彼を診てくれ。」
リックはジーザスの手錠の鍵を取る間、私にそう呟く。
エイブラハムが抱えてきた男の人は右足を怪我していた。
「だけどリック、診るって言ってももう手当してあるわ?」
そう。
かなり丁寧に包帯が巻かれている。
「僕がやったんだ...車が横転した時に怪我をしてね。」
私とダリルが助けた男性は言う。
「あぁ、でも俺たちの車に乗せるには、傷跡を確認しなきゃならない。」
「リック...そんなこと「ただの怪我なら確認だけで済む。」
「あぁ、それで気が済むなら確認してくれ。」
ジーザスは否定的だが、怪我をした男はそう言ってくれた。
「でもリック......きちんと手当てされてるのに今ここで包帯を外すわけにはいかない。
確認は熱が出てからでいいと思うんだけど。」
外した後、こんな不衛生な場所でまた同じ包帯をさせるなら...熱が出てからで平気だろう。
「熱が出たら、車から降ろせばいい。」
男は私とリックに言った。
きっと、ここまで言えるということは本当にウォーカーに噛まれたわけじゃないんだろう。
「わかったよ。
...発熱がわかったらすぐに車から下ろす。」
リックはそう言って車に乗り込んだ。