暗闇の先に
□18,緊急会議
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それから1か月半後…。
私はやっと全快し、カールは外出できるまでに回復した。
とはいえ私の右手にはまだ痺れが残っており、カールは片目を失ったまま。
「それじゃ、外すね…。」
診察にやってきたカールの頭の包帯に手をかけたデニスは言う。
私は調べ物をしていた手を止めてカールの処置に立ち会った。
…治ってきたとはいえ、包帯を外したカールの目は痛々しい。
「調達組に言って眼帯を探してもらわないとね。」
デニスは私のすぐ隣で呟いた。
「いいよ、包帯で十分だ。」
「でもさぁ…「いいんだってデニス。」
私はカールを庇うようにそう言う。
きっとカールの脳裏にもあの人が頭によぎっただろう。
「2人…3人とも、緊急会議だって。」
そんな中、何やら慌てた様子のミショーンが診療所へとやって来て言った。
「今度は何の問題?」
「さぁ⁇リックとダリルが集合かけてる。」
私が尋ねるとミショーンは首を傾けながらそう言う。
「ダリルとリックが⁇」
何かまた問題でも見つけたのだろうか。
2人がってことは結構大変な事なのかもしれない。
「了解。
少しだけここを片付けてから行くね。」
出しっ放しにしていた本に手を伸ばしながらそう言うと、ミショーンは私が片付けようとした本やファイルを手に取った。
「片手じゃ大変でしょ?」
そう言ってくれた彼女は、そこらに広がっていた本をまとめると、そのまま机の上に置いてくれる。
「ありがとう。」
回復しているとはいえ、腕を動かせばまだ巣少し痛みがあるし、何より手の痺れが残っている。
「カールとデニスもだよ。」
そう言われた私たちはミショーンと共に会議場所の教会へと向かった。
ディアナが亡くなってから会議は彼女の家からではなく教会で行われるようになった。
ミショーンが教会の扉を開けると......ベンチには住人達が揃って座り、中央にはダリルがいた。
さらにその向こうにはゲイブリエルがいる。
そして私が状況を理解する前にカールとデニスはさっさとベンチに行き、マギーがピアノでウエディングソングを弾き始めた。
あまりにも突然の出来事に開いた口が塞がらず、ただただ口元を抑える。
「......ねぇちょっと待ってよミショーン。
ただの会議って......「リックとマギーがね。」
そう言って彼女は微笑んだ。
「こんなのって...」
決してみんなが正装をしているわけでもないがすごく嬉しい。
ダリルはいつものベストだし、私だって普段着で...しかもウエストポーチまでしたまんまだ。
「メイ、一旦指輪を貸して...ダリルの方に。」
ミショーンに指輪を預けた私はまっすぐとダリルの元に向かって歩く。
こんなサプライズを企んでたなんて...。
だんだん近くに行くに連れてダリルの表情がはっきりわかると、彼は笑顔で微笑んでいた。
外にいる時や話している時にはあまり見れない彼の笑顔。
ここを歩くことで、本当に彼と結婚するんだという実感が湧く。
まっすぐダリルの元に向かう私を見つめるみんなの顔は、数日ぶりに笑顔になっていた。
「まずは決議を。
この結婚に異議のある者は?」
「う〜〜〜ぁ‼」
ゲイブリエルがそう言うと、ちょうど席に着いたお兄ちゃんに気が付いた様子のジュディスが声をあげた。
「なんだ、じゃじゃ馬娘が異議があるってか?」
私の横でそう呟いたダリル。
リックは気まずそうに片手をあげてベンチから立ち、外に行こうとする。
「待っ...私は2人にもここに居て欲しい......リックもジュディスも大切な家族よ⁇
進行の邪魔になるなんて言わせない。」
私がそう言うとリックは笑顔で微笑み、ベンチに腰を下ろした。
「それでは...汝ダリルはこの女メイを妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず死が二人を分かつまで愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
スラスラとそう言ったゲイブリエル。
「あぁ、誓います。」
ダリルはいつものようにそう言って頷く。
「汝メイはこの男ダリルを夫とし良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も共に歩み、他の者に依らず死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
「もちろん、誓います。」
私はゲイブリエルにそう返事をする。
これで本当にダリルと結婚できるんだ。