暗闇の先に
□17,暗闇の先の光
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「カール‼よかった...よかった‼‼」
そう言ってカールを抱きしめたリック。
「カール、頭痛や痛みは平気⁇」
私はゆっくりと右肩を庇いながら起き上がり、包帯が巻かれていない所の表情から彼の顔色を伺う。
「頭も傷も、凄く痛む。
メイは?たしかメイも...」
カール質問をすると彼はそう言った。
自分の方が重症だと言うのに彼はそう言う。
「平気だよ。」
私はそう言ってゆっくりと身体を起こし、カールのベッドサイドへと移動しようとしたが、私は立ちくらみを起こしてしまい、その場で倒れそうになる。
「メイ!」
そんな私にいち早く気がついてくれたリックは私の身体を支えてくれた。
「君だって大怪我をした後なんだ、無理しないでくれ。」
リックはそういいながら私をベッドに座らせた。
「少しだけだから。」
私はそう言ってカールの顔色を確認し、ゆっくりと机の方へ行き、机の上に置かれた処置についてのメモを見てカールに投与した薬剤と時間を確認し、彼に飲ませる薬を棚から出した。
「リック、カールに水を渡してこの薬を。
片手しか使えないから...ごめんなさい。」
また倒れるんじゃ無いかと思い私のそばを離れないでいるリックに言う。
「あぁ、大丈夫だよ。
言ってくれれば何か手伝うし。」
そう言ったリックだが脈拍や血圧を測るには感覚も必要だ。
「それじゃあ、カールの体温を測ってメモしておいてくれる?利き手、使えなくて。」
私は引き出しの中から体温計を取り出してリックに言った。
「ジュディスとゲイブリエルは⁇」
私達にそう言ったカール。
さすがジュディスのお兄ちゃんだ。
「もう大丈夫だ。
ウォーカーも一掃したし、壁もある程度は補強した。
ダリル、サシャ、エイブラハム、グレンも帰ってきて、今はミショーンとダリルがジュディスを見てる。
今夜はお前の側にいる。」
そう言ったリック。
カールはリックの言葉に小さくうなずいた。
「父さん、もう平気だから家に戻ってよ。
僕よりジュディスが父さんを必要としてる。」
カールが目覚めてから数時間。
家の方から聞こえてきたジュディスの鳴き声に、カールはそう言った。
「いや...でもカール......「僕は平気だから。」
そう言ったカールにリックは何度か頷き、その場を去った。
きっとダリルとミショーンはじゃじゃ馬なジュディスに手を焼いているだろう。
「それじゃあリック、おやすみなさい。」
私は診療所を出て行くリックにそう言って微笑んだ。
翌朝、私が目を覚ますと既に来ていたダリルと目が合った。
「…見てたの?」
「まぁな。
マヌケな顔して寝てたぜ⁇」
「もう…最低‼
仮にも婚約したての奥さんに言うセリフ⁇」
私はそう言いながら目をこすり、体を起こす。
「メイとダリルって婚約してたの⁈」
どうやら隣のベッドのカールはもう起きていたらしく、カールが驚いた様子で私達に尋ねてきた。
「まぁね。
彼のプロポーズに私が渋々オッケーしたのよ。」
「渋々だったか?」
私がカールに返事をすると、ダリルはそう言う。
「渋々よ。
こんなに心配させる人と結婚してくれるのなんて私ぐらいなんだから。」
「それはこっちのセリフだろ。」
「もう夫婦喧嘩⁇」
そう言い合う私とダリルにカールはそう言って笑った。
それからしばらく3人で談笑しているとリックがジュディスと共に診療所へとやってきて急に騒がしくなった。
「さてと...俺はこれからエイブラハムと一緒に壁の材料の調達に行かなきゃなんねぇからそろそろ行くぞ。」
そう言ったダリルに私は一瞬大きな不安がよぎる。
また中々帰ってこなかったらどうしよう。
今は幸せ絶頂だし、そろそろどん底に落とされてもおかしくない。
「どうせこの前みたいに俺が帰ってこないんじゃないかと心配してんだろ⁇」
そんな私の不安を察知したダリルはそう言い、私を落ち着かせるために優しいハグをしてくれる。
「してるに決まってるじゃない。」
私がそう言うと彼は頬にキスをしてくれる。
「せっかく婚約したんだ。
簡単に独り身にはさせねぇよ。」
そう言ってダリルは外へと行こうとする。
「ちゃんと信じて待ってるから。」
私は出て行こうとするダリルに笑顔でそう言って手を振った。