暗闇の先に
□16,成長
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診療所に行くと丁度スコットの手当をしていたデニスが居て、私は様子を見る。
熱が少し下がり、傷口の赤みや腫れ、うみの量が落ち着いて改善してきていることにホッとし胸をなでおろす。
手当を終えてから私は椅子に座りぼーっとする。
なんだかやっと一息つけた気がする。
あれから多くの住人の怪我を見て、何人もの死を見て、転化した元住人の脳を破壊してきた。
あとはダリルとサシャ、エイブラハム、グレン、ニコラスが無事に帰ってくるのを祈るだけだ。
「メイ、今朝の話について少し話そう。」
そう言って診療所に来たのはリックだった。
「あ〜...少し外しても?」
私がデニスの方を見てそう言うと、彼女は頷いてくれる。
監視塔に移動するとそこにはミショーンが居て、三人で話すことになった。
「外に出られれば採石場に置いた車に戻り奴らを導ける。
その抜け道っていうのは安全なのか⁇」
静かにそう尋ねたリック。
「わからない。
実際どこにあるのかも知らないし...でも少なくとも門を通るよりは「監視台を増やして、銃や照明弾を使い奴らを散らす。」
私の言葉を打ち消して、強い口調で言ったミショーン。
「ミショーン、俺たちでやるんだ。
カール、タラ、ロジータ、キャロルで。」
「他の人は?」
なんだか気に入らない様子のミショーン。
「俺たちだけの方がいい。
「それ本気⁇」
「訓練する時間があればいいが息をつく暇もない。」
「アーロンとヒースなら...外で戦う術は持ってる。」
私は言い合いをする2人に口を挟む。
「私たちも住民の一人なわけだし、今はひと息ついてる...言い訳でしかないわ。」
だけどそんなことでミショーンの機嫌が直るわけもなく、彼女はそう言ってリックの目をジッと見た。
「リック。」
その時、私たちの後ろから声をかけて来たのは何やら模造紙を持ったディアナだった。
「町の拡張計画書よ、あなたに見せたくて。」
「その前にやることがある。」
リックはそう言って彼女を突き放したが、代わりにミショーンが受け取った。
「この先の町のためよ。
いずれにせよ町にはこの先がある。」
そう言ったディアナ。
私達の中の数人しか生き残れなかったとしても、この町は運営していかなくちゃいかない。
「ミショーン、あなたの考えを否定するつもりはないけど...今はただ、時間だけが過ぎてるだけよ。」
「時間が経てばそれぞれ問題を解決して戻ってくるわ。
みんなそれぐらいの知識があるもの。」
そう言ったミショーン。
「私は心から彼らを探しに行くべきだと思ってる!!
...私のときはみんなで探してくれたじゃない‼‼」
凄く悔しい。
...私がピンチの時、いつだってダリルが私を迎えに来てくれたのに......私はここで、ただ時間が過ぎるのを待つだけなんて。
そう思うと私は両目いっぱいに涙が溢れていた。
「この前はキャロルとダリルがあんたの居場所を...」
その時、私の表情を見たミショーンは言葉を詰まらせる。
リックは私を落ち着かせるためにか、後ろから優しいハグをしてくれた。
......けどそのハグはダリルからされる力強いものなんかじゃなく、リックらしく、遠慮混じりで壊れ物を扱ってるようなハグで。
私にとってはこの場にダリルが居ないことを痛感するだけのもの...。
そんな気持ちに耐えきれなくなった私は、リックとミショーンにごめんなさいと言ってからディアナの横を通り、診療所へと戻った。
あんな場面で泣くなんて卑怯すぎる。
だけどダリルなら自分を犠牲にしたって私や仲間を助けに行くはずだ。
ウッドベリーでもジョー達の時もターミナルの時も病院の時だって...いつだって来てくれたのに......。
「メイ、弾は無事に取り出せたのか⁇」
そんな私に声をかけたのはスコットだった。
どうやら目が覚めたらしい。
私は必死に涙を引っ込めて彼に返事をする。
「えぇ、無事に取り除いた。
...けど感染症を起こしてるし、まだ暫くはここで安静に。
痛みがひどければ痛み止めもある...気分はどう⁇」
「少し痛むけど我慢できるさ。
それより君は?なんで泣いてるの⁇」
私の問いに答えつつも質問して来た彼。
「たいしたことじゃない。
それよりあなたはしっかり休んで?」
私は彼にそう言って涙を拭い、傷の様子を確認した。