暗闇の先に
□16,成長
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「ねぇメイ、診療所に頭痛薬ってある⁇」
作戦の予行演習に出かけたリック達を見送り、タラとユージーンの手伝いをしていた私。
外での作業のせいかタラが言った。
「あるけど...タラの場合、この前のこともあるし少し休憩しましょ⁇」
私は2人にそう提案する。
タラの顔色はあまり良いものではない。
監視塔が早く出来るに越したことはないが修復ではなく新設だし、休憩すら出来ないほど急ぐわけでもない。
「君が無理をするぐらいなら、作業を一日遅らせよう。」
そう言ったユージーンは木を切っていた手を止めて片付けを始める。
私は片付けをするユージーンにノコギリを渡してからタラを連れて診療所へと向かう。
「はい、とりあえず頭痛薬ね。
頭痛以外にも目眩や動悸、吐き気とかはある?」
私はタラを椅子代わりのベッドに座らせてお水を渡す。
「頭痛と目眩だけで他には特に...」
タラがそう言った時、突然住民達の叫び声が聞こえはじめた。
私とタラはどちらからともなく顔を合わせ、そこに居た4人全員が窓の外を確認する。
「侵入者か?」
目の前の道を走って行く1人の男を見たあとでユージーンが呟く。
問題が起きているならば私は行かなくちゃいけない。
多くの人が不在の今、戦える人はそんなに多くはない。
そう思った私は棚から医療用メスを引き出しごと取り出し、机に置いた。
私とタラはナイフを持っているが、デニスとユージーンは持っていない。
「私、行かなきゃいけないから...誰かが来たらこれで戦って?
銃声は聞こえてこないから銃は持ってなさそうだし、相手はウォーカーじゃない。
致命傷になればなんとかなる。」
私は3人にそう言いい、ナイフホルダーからナイフを取り出して外へと出た。
まずはディアナの家に行ってマギーの安全を確認しに行かなくちゃいけない。
そのあとで戦おう。
そう決意したが思ったより状況は悪いようで、診療所の裏側に回り込んでディアナの家を目指していると1人の女性と鉢合わせになった。
女性は不気味な笑顔を浮かべながら襲いかかってくる。
そんな彼女をかわして瞬時に振り返り、腕を思いきり斬りつける。
だがそんなもので彼女が死ぬはずもなく、もれなく私の腰にもナイフが当たってしまう。
それから私が彼女を思い切り蹴飛ばすとその反動で彼女は持っていたナイフを落とした。
私のナイフを持つ手を阻止する彼女と取っ組み合いになると、先程の彼女の腕の傷口に思い切り爪をめり込ませ、彼女を押さえ込み、彼女が苦しんでる間に、彼女自身のナイフで何度も刺した。
最後にどういう意味を持つのかわからない額の「W」という文字のど真ん中を...脳天を突き刺す。
血で真っ赤に染まった手を見つめて先程の感覚を思い出し、父の顔が頭によぎったところで私は気持ちを入れ替えてマギーを探しに向かう。
そして気がつくとどこかで車のクラクションが鳴っていた。
走るたびに先程怪我をした腰が擦れて痛んだが今はそれどころじゃない。
ウエストポーチを外して地面に残し、先へと進む。
煙が出ているのを横目にしながらも身を隠して町を歩く途中、もう1人の侵入者とすれ違ったが今度は無傷で倒すことができた。
そしてキャロルと話すマギーを見つけた頃にはすっかり音も止んでいた。
「マギー‼」
私は彼女の元に駆け寄り、彼女の安全を確認しているとキャロルから銃が手渡される。
「彼らは銃を持ってないわ。」
そう言って私に銃を渡すとキャロルは走って行ってしまった。
「マギー、あなたはどこかで隠れてて?」
「銃もあるし私は大丈夫よ。」
マギーはそう言って私の話を聞こうとしない。
「なら、私も一緒よ。」
そう言ってマギーと一緒に謎の侵入者達に立ち向かった。
侵入者がほとんど居なくなるとマギーはディアナの元に行くと言いだした。
ウォーカーに転化した人達の頭を刺して回っている今、マギーの護衛は必要ないだろう。
「わかった...でも気をつけて?」
「そっちこそ、ちゃんと手当てしてね⁇」
気がつけば血が滲んでいる私の腰を見てそう言ったマギー。
「あぁ...大丈夫、軽くナイフが当たっただけだから。」
そう言って平気なフリをしてマギーと別れてからウエストポーチを取り、診療所へと戻った。
「メイ!ホリィが‼」
私に気がついたタラが言う。
デニスはストレッチャーの上のホリィに心臓マッサージをしている。
「大腿動脈からかなり出血してて腹部を切開しようと...」
デニスはマッサージを続けながらそう言うが心拍は下降傾向で。
私が状況の把握をしている間にも彼女は息を引き取った。