暗闇の先に

□15,新たな問題
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「実はまだリックにしか言ってないんだけど...全てが上手くいけば時期に新しい住人が加わることになる。

だから「へ?それってつまり......おめでとう‼」


突然のことに私は驚くことしかできなかった。

グレンの言い方はいつ来るかわからないスカウトしてくる人達のような不確かなものではなく確実なものだった。



「ありがとう。

だから医者の君にも無事で居て欲しくて......会議の前日にリックに頼んだんだ。」


かなり気まずそうにそう呟いたグレン。


なんだ...そういうことだったのか。

私なら参加したいって言い出すのがわかってて、2人はそう言ったのか。


「ずっとメイに謝りたかったんだけど、なんて言えばいいか思いつかなくて。

君を縛るような事をして本当に「気にしないで?

ジュディスの時にハーシェルから散々教わったことだし、もうあの時と同じ失敗はしたくないからマギーのことは最優先に考えたい。」


そう言うとグレンは私に"ありがとう"と言った。



ジュディスが産まれたあの日、私は刑務所内に新入してきたウォーカーに必死で。

それまで散々学んできた技術は何も活かせなないままジュディスは産まれ、ローリは亡くなってしまった。

だから今度こそ...ちゃんと成功させるんだ。


「私はてっきり、医者以外のことは何もしちゃいけないのかと思ってたけど、そういうことなら明日からはユージーンとタラの監視塔の新設を手伝おうかな。」



「本当...ごめん。」


再び謝ったグレン。


「だから気にしないでよ。

私はマギーのこと支えたいって思ってるし、もし事前に知ってたのなら私もそうしてたはずだから。」


そう言うとグレンは少しホッとしたような表情を見せ、ありがとうと呟いて家の方へと戻っていった。

1人残された私は、目の前の池を見ながらぼーっと考え事をする。


私はマギーのように子供を持つなんてこと出来るだろうか。


仮に今現在、ボブやピートような医者がグループに居たとしても10ヶ月先にはもう居ないかも知れない。

そう思うと、一歩進むどころか一歩下がってしまいそう。


けど...ダリルとの子供なら......いつか何もかも犠牲にできる日が来るのかもしれない。


「メイ、まだそこにいる気なら俺は先に寝るぞ。」


1人考え事をしていると、突然ダリルに声をかけられた。


彼は薄着の私を気にしているのか、持ってきたショールをかけてくれた。


「ありがとう。...でも、もう戻るよ。」


そう言ってダリルの手を取って立ち上がる。


「何してたんだよ、あんなとこで。」


「秘密だよ。」


本当のことを言うわけにもいかず、私はそう答えてダリルとともに家へと戻った。







そして翌朝、目が覚めてリビングに向かうとマギーと鉢合わせた。


「ねぇマギー、私もそろそろダリルをしつけ直さなきゃいけないのかな?」


私の言葉で全てを理解したらしいマギーは涙を浮かべて私に抱きついた。


これは私なりの"おめでとう"だ。


今まで何度も子供についての会話をしてきた私とマギー。

マギーがいつか子供を授かった時には私も本格的にダリルのしつけをしなくてはいけないと話したことがあった。


「本当にちゃんと思い出してくれたんだ。」


マギーがそう言いながらハグを解くと、私達は2人で笑いあった。


「ならまずは早起きさせなくちゃ。」


お互いの笑いが途絶えた頃、ボソリと呟いたマギー。


「でもまぁ、最近は作戦のことで疲れてるし、今日のところは勘弁してあげる。


それよりマギー、診療所にいいサプリメントがあるの。

ここじゃ栄養は偏りがちだし...もし必要なら言ってね⁇」


私はそう言ってマギーの肩を叩き、テーブルにあったスコーンを持ってソファーに座った。
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