暗闇の先に

□14,安全地帯
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翌日、私は朝からマギーに呼ばれた。


「今夜、リックに関する会議があるの。

メイも来てくれない?」


そう言ったマギー。


ピートとリック、二人ともに関わっていた私は重要人物らしい。


正直、行こうか悩むところだったがちゃんと起きたことを言わない限り、ピートの暴走が収まることはきっとない。


「わかった。

……けどその前に、ディアナと会わせて⁇」


きっと口で討論するよりも、ディアナに直接ピートからの暴力でできた痣を見せるほうが効果的だ。


「もちろん。案内するわ。」


マギーはそう言って私をディアナの家に連れて行った。


「…話っていうのは?」


ディアナはオーディションの時と同じ部屋に連れて行き、私にそう言う。


私は部屋を見渡し、開いていたカーテンを閉じてから服を脱いで下着姿となり、全身をディアナに見せる。


「ピートに黙ってタラの手当をしたら、勝手なことするなって彼に。

…昨日、彼とリックを見てて全部思い出したけど……私の実父もピートと同じだった。

いくら改善したと思って信用しても、彼を止めることはできない。


マギー、あの後…私はヒロシと2人で逃げたの。
…ヒロシを殺したのは私なのよ。」


今度はマギーの方を向いてそう言う。


「それと……ベスは私に言ったわ。

『私のことは信用しなくてもいい……けど、私を探してる人がいる。

私のことだって、きっと”家族”が捜してるはずだ。』って。

ベスは最後までちゃんと信じてた…だからリックについて行こうと思えたの。

これだけはあなたに伝えたかった。」


私はそう言って服を整え、家を出ようとする。


「待って…。

ピートがなんと言おうと、あなたにはここの物資を使う権利があるわ。

…それだけは言っておくわ。」


ディアナは去り際の私にそう言った。







夕方、私は会議会場に行った。

時間になっても現れないリックに、ミショーンやキャロル、エイブラム、マギーはリックについての討論を始めた。

そしてディアナがゲイブリエルから聞いたリックに関する話について詳しく聞くため、マギーがゲイブリエルを探しに向かう。


「…私はつい昨日まで記憶を失くして、さらにリック達とはぐれてた。

だけどそれ以前にはぐれた仲間がそこにいて、強く”家族”を信じていたの。
……記憶を無くしてたからそれが本当とは思えなかったけど、私も信じた。
それは今も後悔してないわ。

彼はいつだって”家族”のことを一番に考えているわ。」


私がそう言った直後にリックは現れた。


彼は担いでいたウォーカーをみんなの前に下ろす。

彼の衣服や肌にはウォーカーの返り血が付いており、リックが遅刻した理由は誰もが聞かずとも理解したようだ。


それから闘う重要性や外の人間について話したリック。

そしてそのあと、ミショーンの刀を持って会議場所に来たピート。

彼を止めようとしたレジ。


だけど丸腰のレジが刀を持ったピートに敵うはずもなく、ピートはレジの首に刀を振りかざした。



とっさに彼を捕まえたエイブラハム。

私が記憶をなくす数日前、私は彼にもひどいことを言ってしまった。


…後でちゃんと謝らなければ。


それからディアナがやっと、リックにピートを殺すように指示をする。


それを聞いたリックはエイブラハムが抑えるピートに向けて引き金を引いた。


その直後、リックに声をかけたのは初めて合う男の人だった。



「…ねぇミショーン、彼のことを知らないんだけどまだ記憶が足りてない?」


私はすぐ隣にいたミショーンに尋ねる。


「…いや、あんたは正しいよ。」


ミショーンはそう言った。



それから少しして、怪我をしたグレンとニコラスが会場に顔を覗かせた。


その様子を見たマギーはグレンに抱きつき、どうしていたのか尋ねていた。


「二…三人ともこっちに来て?

診療所で手当をするわ。」


私はそう言ってグレンとニコラス、付き添いのマギーを診療所に招き、二人の傷の手当をした。


二人の手当を終え、私の指示通り安静にしていたタラに、事情を話して安静を解く。


それから私はやっと戻って来たダリルの元に向かった。


街の敷地内で穴を掘っていたダリル。


後ろ姿だけで彼だと確信した私は何も言わずに彼の背中に抱きついた。


「…なんだよ。」


そう言って私を振り払おうとする彼。


「ごめんさい……。

全部思い出したの。」


私は彼にそう言い、彼に抱きつく力を強める。


そんな私の拘束から軽々抜け出したダリルは私と向き合わせになるようにクルリと回ると、ダリルは私にキスをした。


「……わかってんだろうな、俺がどんな気持ちで居たか。」


そう言って私の顔を覗き込んだダリル。


きっと彼は数日間、私を熟睡させてはくれないだろう。
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