暗闇の先に

□14,安全地帯
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どこからか口笛が聞こえ、ダリルは通りの様子を見渡す。


それから倉庫の扉をノックし、みんなにもリック達が到着したのを知らせた。


「エリック...エリックは?」


やはり彼はアーロンの仲間なのだろう。

アーロンは倉庫の中にいるエリックの元へと行った。


それからリックとカールとジュディス、グレンとマギーはお互いの無事を確認しあった。


私とダリルも倉庫の中に入り、入り口の鍵を閉める。


「ありがとう...君たちに借りができてしまったね。

この恩はコミュニティに戻ったら絶対に返す...アレクサンドリアだ。

君たちがどう思っているかは分からないが、僕は今夜はもう車に乗りたくない。」


彼の言葉に私はつい微笑んでしまった。

あれだけウォーカーがいたのだ。

休んでから向かうのが賢いだろう。


「だから今夜はここで夜を明かして、明日の朝にアレクサンドリアに向うのはどうだ⁇」


彼のその提案に、ほとんどの人が納得した。


「だがその場合、お前の寝床はあっちだ。

彼と一緒には寝させない。」


リックはそう言って、エリックと離れた場所を指差す。


「それはできない。

僕を止める唯一の方法は僕を銃で打ち抜くことだ。」


彼は少し怒った様子でそう言った。



「ねぇリック、彼らは大丈夫よ。
丸腰だし、エリックは怪我をしてる。

私達は人間なんだし、お互い仲間を大切に思ってる......わかるでしょ⁇」


今にも一触即発なリックに私はそう言う。


「......わかったよ。」


リックはそう言って頷いた。


それから私は自分の足の包帯を外し、昨日付けていた湿布薬を取った。

今日はそんなに沢山歩いていないだけあって、腫れは落ち着いている。


地面に足をつけてもそんなに痛まないし、明日は杖をエリックに貸してあげられそうだ。


「...君が、エリックの手当てをしてくれたんだって⁇」


後ろから声をかけてきたのはアーロンだ。


「えぇ。軽くとも、骨折よ。」


「コミュニティには外科医がいる。

お礼に君が診てもらえるように紹介するよ。」


そう言ったアーロン。


「ありがとう。

けど、これはもう診てもらってるの。
ただの捻挫だから平気よ。」


私は包帯を巻き終えるタイミングで彼の申し出を断った。


「そうか...わかった。

でも、本当にありがとう。」


彼はそう言って頭を下げた。


「お互い人間なんだから、助け合うことは大切でしょ⁇」


「そうだな。」


そう言うと彼はエリックの居る部屋へと戻っていった。


私はダリルの隣で横になる。


数日前は彼の横で眠るなんてあり得ないと思っていたが、今じゃこんな風に安心して眠ることができる。


きっとそれは記憶をなくす前もそうだったのだろう。


翌朝、私達は早い時間に出発した。


途中、バッテリーが切れてしまったがグレンとエイブラハムがバッテリーの交換をしてくれ、お昼過ぎに町へと着くことができた。


「行くか。」


アーロンの指示で運転していたリックがそう言って車を止める。


エリックに松葉杖を貸した私はダリルの肩を借りて車を降りる。


門が開くのを待っていた私達だが突然木の影の物音に気が付いた。


クロスボウを構えたダリルに、私はそっと彼から離れる。


出てきたのはネズミだった。

ネズミを一発で仕留めたダリル。


それとほぼ同時に開いた門。

私は片足を庇いながらも自分の足で門の中へと進んだ。


「ここから先は、武器置いて行くんだ。

それがここのルールだからな。」


門を開けた男がそう言った。


「まだ俺たちはここに残るか決めていない。」


リックが男に向かって返事をする。


「いいんだニコラス、彼らには先にディアナと話をしてもらう。」


アーロンが彼にそう言ったことで、彼の名前はニコラスだとわかった。

そしてその後でアーロンは私達をディアナと話させると言った。

一体ディアナとは誰なのだろうか。


「ディアナはここのリーダーさ。

そうだな...リックから始めるのはどうかな?」


ポカンとしていた私達にアーロンは言う。

きっとこれがオーディションというものなのだろう。


リックがディアナの家でオーディションをしている間、私達は彼女の家の前で待った。


その間、誰一人口を開くことはない。


こういう所がこの世にまだあっただなんて。


私は意味もなく辺りを見回したり、壁を見上げる。


きっとここならウォーカーを完璧に防げるのだろう。
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