暗闇の先に

□13,もう一度
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「……ねぇ、あの質問なんだけど、私はウォーカーを何体殺してきた⁇」


「さぁな。…だけどメイを仕込んだのは俺だ。

1体や2体ってわけじゃねぇ。」


そう言ったダリル。


「そう……人間は⁇」


そう聞いたがダリルは答えてくれなさそうだ。



「殺したことがあるかないかだけでも教えて⁇」


私は彼にする質問を変えた。


「……奴はお前にとって敵だった。」


彼は前を真っ直ぐ見ながらそう言った。


私は正直に答えてくれた彼にありがとうとつぶやく。

"奴ら"ではなく"奴"ってことは、1人だけなのだろう。


私も”この世界に生きる人間”だったのだ。


自分勝手なリックやここの人間に起こっている場合ではなかった。

…私が一番自分勝手だった。



そう思い、私はただただ外を見つめる。


「……ダリル、車を止めて‼」


「は?」


「いいから‼」


そう言って車を止めたダリル。


「……ライトを上向きに照らしてみて⁇」


私の言葉に従ったダリル。


ダリルがライトを切り替えると、そこにいた多くのウォーカー達はこちらを振り返った。


「…引き返そう。


待ってりゃリック達も引き返してくるさ。」


ダリルはそう言って車を引き返させた。


そう思って待っていた私達だか、リック達とはぐれて15分近く経っても彼らは戻って来ない。


それどころか空に登る照明弾が目に入った。


距離はそう遠くない。

はぐれてからの10分での行動範囲とも言える場所だ。


「...行くか。

もしリック達じゃないとしても、必ずあの光を目指すはずだ。」


ダリルは私に言って車のエンジンを再度つける。


そしてその光の元に行くと、足を引きずりながらウォーカーから逃げている男の人を発見した。


「助けてくれ‼」


そう言いつつウォーカーから逃げる男。


ダリルとキャロル、エイブラハムは車を降りてウォーカーを一掃した。


それから武器や荷物をダリルがチェックし、車に連れてきたダリル。


「僕はエリックだ‼

君達はリックの仲間だろう⁇」


そう言った彼。


どうやら彼はアーロンの言っていた仲間らしい。


「エイブラハム、ここを頼んだ。

少し休めそうなところがあった。
キャロルと見てくる。」


そう言うとダリルは車を降りて行く。


私はダリルが帰ってくるまでひたすら無言でジッと外を見つめた。


「向こうに移動しよう。」


戻ってきたダリルはそう言って建物の近くに車を止め直し、私たちは中に入る。


そこは倉庫みたいな造りなのだが、奥には部屋のような場所が広がっていた。


「メイ、手当てをしてやれ。」


部屋に入って一番に私にそう言ったダリル。


「...手当て⁇」


彼は私のウェストポーチを指差した。


このウェストポーチの中身で手当てをしろというのだろう。


「わかった。」


男の人だが怪我をしているのだ、仕方がない。


私は彼が座るソファーに行き、靴を脱がせて足を見た。

内出血した足は紫色に変色している。



「骨折してるわね。」



そう言って私はテーピングテープと湿布、包帯をカバンから取り出す。


「君も足が悪いのかい?」


どうやら先ほどから私の足を見ていたらしく彼はそう呟いた。


「これはただの捻挫。

...でも、長いこと無理してるから、治りは長引きそう。」


彼は私の言葉にただ頷いた。

踵から足首に向かってテーピングを施し、今から彼の足に貼る湿布薬を手で一度温める。


「君は医者なのか?」


「...違う。

ただの看護助手。」


私がそう言うと彼は頷く。


「さぁ、少し冷たいわよ?」


患部に当たるように湿布薬を貼り、それからきつめに包帯を巻いた。

近くにあった本やダンボールを積み上げ、即席の足置きをつくる。


「ここに足をのせて?

じゃなきゃどんどん腫れるわ⁇」


彼は黙って私に従った。


そして私は立ち上がり、外でリックを待つダリルの元に向かう。


「手当て、終わったのか⁇」


「うん。

軽くても骨折ね。」


「軽くてもかよ。」


そんな私に突っ込んでくれるダリル。


「中に居ろよ。」


私にそう呟いた彼。


「ここに居たい。」


いつの間にかダリルの横は安心できる場所になっていた。


「...気をつけろよ。」


そう言って私の頭に手を置いてポンっと叩いたダリル。


そんなダリルに私はウンと頷いた。
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