暗闇の先に
□13,もう一度
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それからベスを埋葬した私達はノアの故郷、リッチモンドに行くことにした。
タイリースの運転する車にはノア、リック、ミショーン、グレンが。
そしてダリルの運転する消防車に、私を含めた残りのみんなが座る。
車の後部に乗り込もうとした時、キャロルはニヤリと笑って言った。
「メイは助手席じゃないの⁇」
みんなが綺麗に着席し、すでに後部の席は埋まっている。
きっと誰かがそう差し向けたに違いない。
......けど、ダリルのことをよく知るにはいい機会なのかもしれない。
「わかったわ。」
私はそう言って車から降り、助手席へと座った。
助手席に座るとダリルは少し不機嫌そうな表情を私に見せる。
通常の車のように吹き抜けになっていない消防車。
完全に私とダリルの2人だけだった。
それからしばらく車を進めることになった私達。
普通の世界なら助手席にいると飲み物を渡したり、高速料金を渡したりと仕事があるのだけれど、この世界ではそれが全くない。
さっき頭を使ったせいかもしれないが、ひたすら続く同じような道と心地の良い揺れに、私はどんどんと眠くなってくる。
「少し休め。」
「平気。」
そう言って先ほどダリルがくれたタオルを頭にかぶせるように乗せる。
「ダリルは私の何を知ってるの?」
「何もしらねぇよ。」
そう言ったダリルだが、それはきっと嘘だろう。
口元が笑っている。
きっとからかって遊んでいるのだろう。
「…嘘つき。」
そう一言呟き、再び窓の外から森を見つめる。
こう見るとなんてことない普通の森なのに…奴らはいるんだ。
「……で、何を知ってるの⁇」
再び彼に問う。
「なんにも。」
やっぱり答えてくれない彼。
そんな彼はさっきより笑っているように見えた。
彼が運転を続ける間、数回同じ質問をしたけれど彼は答えてくれないまま。
しばらく進んだところで、運転手はエイブラハムと交代になり、私は後部座席に座ることにした。
後部座席は後部座席で誰一人話していない。
ダリルと反対側に座っていたカールが抱えているジュディスは何度か私に向かって手を伸ばしていた。
その度に彼女をあやしていた私だが、しまいにカールが言う。
「ジュディスはメイのそのネックレスが好きなんだ。」
その言葉に私は自分がつけているネックレスに触れる。
義父にもらったリングをつけているネックレス。
なくしていないことに驚いた。
…そういえばママと義父はどうなったのだろう?
実父である父は死んだとキャロルに聞いたが、なぜ実父のことを知っているのだろう。
やっぱり不思議なことばかりだ。
結局私はその後に眠ってしまったらしく、気がつくと車は止まっていた。
「ごめんなさい…重かったんじゃ?」
どうやら私はダリルの肩にもたれていたらしく、彼は身動きも取らずにいてくれたようだ。
「お前のせいで俺まで留守番組だ。」
そう言ったダリル。
きっとリックたちの車はもう町の方まで行ったのだろう。
「それはごめんなさい。」
「そうじゃないわ、ここにも戦闘員は必要よ。」
そういったのは無線の番をしているキャロルだった。
「…他のみんなは?」
「エイブラハムとロジータ、タラ、サシャ、マギーは少しこの辺りを回るって。
何か食料でも見つかるといいけど。」
そう言たキャロル。
「それよりメイ、そのガーゼ変えた方がいいんじゃない?」
そう言ったキャロル。
「…でもガーゼなんて。」
私がそう言うとダリルは私の腰につけているウエストポーチを開けた。
「あるだろ、ここに。」
そう言って消毒液とガーゼ、テープ、軟膏を取り出した彼は出したものを自分の膝に乗せ、私の額についているガーゼをはがした。
なんで手当て道具なんて持っているのだろうか。
それに軟膏にはなぜか”持ち出し禁止”と書かれている。
一体これはどこから持ってきたのだろう。