暗闇の先に
□12,夢か現実か
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***ダリルside***
俺はベスの為の穴をひたすら掘り続けた。
俺がメイのそばを離れた間に怪我をして病院に連れて行かれ、更には記憶までもを無くした。
病院であいつを迎える時の態度があいつらしくないとは思っていたが、メイにとって俺らが他人になってるとは思ってもいなかった。
メイはあの時、明らかに俺を避けた。
ベスに担がれるメイを見た時、正直俺は仕方ないと思った。
あいつを守ってやれなかったんだから避けられて当然だって。
メイが病院に残るか尋ねられてグループに残ると言った時、俺はメイに駆け寄り抱きしめた。
絶対にどこにも行くなって。
そうすればあいつを守ってやれるって単純にそう思った。
けどあいつは俺を抱きしめ返すこともなく俺の手を振りほどいて松葉杖に頼って歩いた。
階段で俺じゃなくキャロルの手を借りた時点でもう呆れられたんだ、メイが俺を避けるのは全部俺のせいだ、仕方ねぇって...。
そのあとで記憶を無くしたと言った時、メイは俺をまっすぐに見て過剰なスキンシップはやめろと言った。
記憶を無くしていることには驚いた。
だけどあいつはここ最近、父親のことで悩んでいた。
だから記憶をなくすのはあいつにとって良かったのかもしれない。
それに守ってもやれねぇ俺の事なんて、このまま嫌ったままでいればいいとも思った。
ソフィアといいベスといいメイといい。
俺は誰ひとり守れなかった。
だから俺は穴を掘り続ける。
守れなかったベスの為に唯一できることだ。
「ダリルさん...!」
そんな俺に声をかけたのはメイだ。
何か言いたそうなメイ。
「なんだよ。」
俺は冷たくそう言い放った。
その瞬間、メイの表情が固くなるのがわかる。
わかってるけど......これが一番いい。
そんな俺の態度に見かねたのか、近くにいたリックがメイを離れたところに連れて行った。
少ししてリックが帰ってくると、リックは俺に言う。
「メイはお前に謝りたいんだと...聞いてやれ。
…それにメイは俺等のことを絶対に思い出す。」
そう言って俺からシャベルを奪い、リックは代わりに俺にタオルを持たせた。
これで汗を拭いて休憩しろってか⁇
それよりなんであいつが謝るんだよ。
謝るのは俺の方だ。
......けど謝って関係を修復したとしても、また傷つけるのは俺だ。
そんなことを考えつつメイの元へと歩みを進める。
下を向いて涙を流すメイを目の前にした時、気がつけばメイに"泣くな"と声をかけていた。
そしてその時、リックが持たせたタオルの意味がわかった。
それからメイは何もかも忘れてしまった自分に失望していると言った。
仕方ないと慰めた俺だが、メイを慰めれば慰めるほど、心配するなと言って抱きしめたくなる。
それから真っ赤な目をさせて俺に謝ったメイ。
そんなメイに俺は、初めて会った時のように呼び捨てで呼べと言った。
何だかあの時のメイにそっくりだ。
苦手なくせに、ズカズカと俺の心に入ってきやがる。
メイを傷つけるのは嫌だが、こんなメイを放っておくのはもっと嫌だ。
「メイは俺が苦手か?」
だから最後に一言だけ尋ねた。
「......わからない。
はじめはすこし怖かった。
けど、今のダリルは怖くない。」
メイはそう言った。
その時のメイの表情は病院で俺がメイに触れた時のような表情ではなく、もっと柔らかいものだったのは間違いない。
でも、それだけ聞ければ十分だ。
もう一度、初めからあいつのペースで歩みを進めてやろう。
だからメイを抱きしめたくなる衝動を抑えるためにもその場を離れ、また穴を掘ることにした。