暗闇の先に

□9,見えない敵
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かなり長いこと森を歩き続けた。

道中、人に会うこともなかった。


『どこか休むところを見つけなきゃ。』


陽が暮れてから4,5時間は歩いただろうか。


『...あぁ。いつまでも森を歩いてても仕方ない。道へ出よう。』


私達は少し方向転換をし、大きな道沿いを歩く。


このままみんなに会えなかったらどうしよう。

みんなは無事だろうか...。

ハーシェルの牧場の頃みたいに集合場所があるわけでもない。

みんなどうしてるだろう。

マギー、ベス、タイリース、サシャ、ボブ、グレン、ジュディス、子供達や住人はたぶんバスに乗ったはず。


ダリルとカールは一緒に居たはずだから、2人でいるのかな...。

リックはどうしてるだろう。ダリルやカールと一緒⁇
それとも総督にやられてしまった⁇


ミショーンも。
...彼女はどうなった⁇


私は不安を抱いたまま歩き続け、ひとつの小屋を見つけた。


『今夜の宿だ。...誰もいないといいな。』


父はそう言ってナイフを構えると、わざと音を立てて扉を叩いた。

中からは何も聞こえてこない。


『あけるぞ。』


父はそう呟き、扉を開ける。


...その小屋はいかにもジャンキーの為の小屋で、お金やお酒の瓶、タバコや薬なんかで溢れていた。


『別を探しましょう。』


私はそう言った。

...こんな部屋で一晩過ごせるわけがない。


『いいじゃないか、酒にタバコ、薬まである。
まぁ金は今となっては必要ないが今夜はここで寝よう。』


父はそう言ってお酒の瓶に手をつける。


『父さん‼』


私が注意した頃にはもう遅く、父はお酒を飲んでいた。


『メイも飲むか⁇
もう20歳は越えただろう。』


そう言って私にお酒を進める父。

私は黙ってお酒の瓶を割ってやった。


『何してんだよ!!‼』


父はそう言って私に殴りかかってきた。


一口でもお酒を含んだ父は...父でなくなった。



何度も殴られた私。
父の好きなようにされた私。

父の気が済んだ頃には外は明るくなっていた。


そして気がつくと父は眠っていた。

どうやら私も気を失っていたらしい。


服を着直してから外へ出るとすでに太陽は真上にある。



...このままじゃダメ。


......決めたはず。


次、父が変わってしまったら、父を殺すって。


.....そう決めたんだ。


このまま二人でずっと逃げて行くにしても父といたら私はダメになる。
せっかく生き残れたんだから私が強くならなくちゃ。



私はすっかり眠り込んでる父の首を絞め、父を殺した。

途中で目を覚ました父は反抗をしたけれど私は気にせずそのまま続け、気を失わさせ、脈も打たなくなった。

そして父を小屋の外へ運び出し、落ち葉を集め、父の大好きなお酒を沢山かけてマッチで火をつけた。

ジャンキーの小屋だった為、何もかもが揃っていた。


日本人らしく火葬してあげよう。


そしてウエストポーチにずっと入れていた父と母の結婚指輪を火の中に入れ、その後でいつか父がくれたキーホルダーも火の中に入れる。

ユラユラと揺れる火を見ていると指輪がグニャリと形を変えるのが目に入った。

これで終わったんだ。


父も母も...仲間ももう居ない。



ここにいるのは私一人だけ。






火が消えて少し経ってから私は父の骨を埋め、使えそうなものを持って小屋を離れた。

お酒がたくさんあっただけあって炭酸水も置いてあった。

小屋の持ち主はタバコや薬もしていたのだろう。
マッチまであった。


とりあえず森を歩こう。


もしかしたら誰かと会えるかもしれない。



結局いくら森を歩いても"家族"に会うことはできず、朝を迎えてしまい、私は見つけた車の中で仮眠を取ることにした。


「おい、起きろ。」


そして声をかけられたことによって目を覚ました私。


声の主を見てみると車の外には全然知らない男の人たちが6人ほど居た。


「一人か⁇...都合がいい。」


そう言うと男は私の腕を引っ張っり外へ引きずり出すと、服を脱がせた。


「きったねぇ体。」


男は私の体を見るとそう言った。


それからほぼ丸一日、ぶっ通しで男達の好きなようにされた私。

きっと父を殺したバチが当たったのだろう。

6人もいるんじゃ私は何も出来やしない。


なんでこうなるんだろう。

やっと父から解放されたのにこんなんじゃ意味がない。


私は静かに涙を流しながらだんだん浮かび上がっていく星を見つめた。



唯一の救いはあの日、ウッドベリーで監禁された日から生理が止まっていることだ。


あの後にした妊娠検査薬では妊娠していなかったため、ただの生理不順。

...きっと、過度なストレスのせい。

父と再開したり、色んな人から暴力や性的虐待を受けたせい。


......まぁ、こんな世界で妊娠したくもないしこっちには好都合だ。

きっと昨日の父との行為も今の行為でも、妊娠することはない。


......それが唯一の救い。
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