暗闇の先に

□7,それぞれの弱み
1ページ/8ページ


いたたたた...

私はあれから数時間後、みんなの話し声で目が覚めた。

体はバッキバキで身体中が痛い。

短くなった髪の毛に違和感を感じながらも寝癖を整えた。

せめて髪の毛が長かったら傷や痣を隠せたのに...。


それよりみんな揃ってどうしたんだろう。
何かトラブルでも起きたのかな...。

聞こえてくる声は、普段のお喋りと言うより会議みたいな口調だ。


やっぱり1人になると父や男の姿が脳裏に浮かび、身体中があの時の痛みや嫌な心地を思い出す。

今にも独房の入り口から男が入って来そうだ。


何かで気持ちを紛らわせよう。

私はベッドからゆっくりと起き上がり、独房から出て階段を降りてみんなの所へと行く。


そして驚くことに、そこには死んだと思っていたアンドレアが居た。


「メイ‼」


外へ出てきた私に気づいたアンドレアは、私に近づいてハグをしてきた。

彼女が私を強く抱きしめれば抱きしめるほど、痣が痛む。

...けどまぁ、そんなことはどうでもいいか。

アンドレアが生きていたんだもん。


「大丈夫だったの?今まで何してた⁇」


「アンドレアは私と冬を越して、メルルに捕まってウッドベリーに入った。...で、今もその住人。」


私の問いに答えたのはアンドレアではなくミショーンだった。


「そうなの⁇」


アンドレアは私の言葉を聞くと、ハグを解きながら小さな声で「うん。」と呟いた。


「さっきリックから貴方が酷いことをされていたと聞いたわ。
...そうとは知らずに...ごめんなさい。」


アンドレアが私にそう言ったところでダリルは私に近づいて耳打ちをした。


「無理すんな、メイ。
向こう行ってろ。」


そんなダリルに向かって首を横に振り、アンドレアに言った。


「大丈夫よ。
貴方のせいだなんて思ってない。
私が捕まったから悪かったのよ。」


中立の立場にいるアンドレアにはそう言うしかない。

そしてアンドレアが頷くと会話はそれまでの話へと戻った。


「アンドレア、総督は嘘をついているの。
あなたに話した通り、私達は手を出していない。
今夜、彼が油断してる隙を狙って殺してほしい。」


そう言ってキャロルはアンドレアにナイフを渡していた。


「...俺、ゲートの所に車を回してくるよ。」


そう言ってグレンは鍵を持って外へと行った。


「アンドレア、街に戻って私の母の事を聞かれたら、再婚相手と居るって言っておいて⁇
きっとあいつは貴方がここに来たことを知ったらしつこく聞いてくるわ。」


私は歩きながらアンドレアにそう言うと、彼女は笑顔で頷いた。


それからアンドレアに車とナイフ、銃を渡して、私達は彼女を見送った。


「ねぇマギー、お願いがあるんだけど...」


隣を歩いていたマギーに私は言った。


「髪の毛、切り揃えてくれない⁇」


私がそう言うと「ミショーンの方が切るのは得意かもよ?『スパッ』ってね。」なんて冗談を言っていた。


「俺がやってやろうか⁇」


マギーと反対隣にいたダリルは言った。


「だめよ。お兄さんと同じで下手かもしれないじゃない。」


そう言うと、ダリルは拗ねてしまった。


ほんと、わかりやすい。


「...嘘だよ。
こういうのは女の子の方が得意なの。
女の子は毎回、デートの前に前髪切るんだから。」


そう言うと今度は真面目に「女は大変だな。」と言って一足先に中へと入っていった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ