暗闇の先に

□1,約束
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それからデールはジャクイルに監視を任せると、キャンピングカーの中に私を連れて行き、私をテーブルに座らせる。


「本当は紅茶を出してあげたいんだけどあいにく切らしててね。」


私に水を出すと、冗談交じりにそう言った。


「...で、どうした?
なんで出て行こうとした⁇
何か問題があったか⁇」


デールは私の目を見てゆっくりと話してくれた。


「...男の人が苦手なの。
小さい頃にお父さんに暴力を振るわれてて。

...シェーンとエドを見たとき...ここには居れないなって思って。」


「話してくれてありがとう。

けどあいつはそんなやつじゃない。
君やキャロル、アンドレアを助けるためにしたことだ。

あと...彼は少しイラついてたからな。」


デールは優しい口調でそう話してくれた。


「だからって...」


「...まぁいい。
君はここに居るべきだ。

もしお兄さんが死んでたとして、君まで居なくなってたらダリルはどうなる?」


なぜかダリルのことを言い出した。


「なんでダリル?彼は私がいなくなったって別になんとも...」


「そうか。
...まぁいい、今夜は魚だ。」


彼はそう言うとキャンピングカーを出て行った。

それから私は昨日と同じ木の下で座った。


ずっとここに?ママ達は⁇
これからやっと、ちゃんと暮らせるって思ってたのに...。


...なんでこんな事に...。


前日もあまり寝れていない私。

うたた寝をしているとシェーンがやって来て「いい加減、テントで休め。」と言われた。


「なら、ダリルのテントを借りる。
...今はいないからいいでしょ⁇」


私はそう言い残してダリルのテントの中に入ると、弦の切れたクロスボウや、壊れたクロスボウが無造作に置かれていた。

こんなんじゃ横になれやしないよ...。


そして私は片付けがてら、クロスボウに弦を付け替えたりと、クロスボウの修理をした。

...久しぶりに触った弓。
形は違えど弓は弓。

昔、ママは弓道をやっていて私も習っていた。

...そして新婚旅行から帰ったら、本格的にこっちで一緒に弓道教室をやろうって、ママと話してた。


そんなママとの会話を思い出し、懐かしみながらも横になるスペースを確保し、眠った。


『バンッ...』


「嫌ぁぁぁーーっ‼」


『バンッ...バン...』


私は騒がしい銃声や悲鳴で目が覚めた。

チラリとテントの外を覗くとウォーカーが何体もいる。

...私は咄嗟にさっき張り直したばかりのクロスボウを持ち、外に出た。


脳みそを狙うんだったわね...。

見事一発で後ろを向いていたウォーカーに矢が刺さる。

そして倒れたウォーカーが狙っていたのはダリルだった。


「お帰りダリル。
...ちょっと借りるね。」


私がウォーカーを殺したことに驚いていたままのダリルにそう言って、他のウォーカーを倒すためにその場を離れ、近くにいるウォーカーを始末する。


そして全てのウォーカーを始末し終えると、たくさんの犠牲が出たことを知った。


「メイ、どこでそれを⁇」


噛まれてしまったエイミーと彼女に寄り添うアンドレアを見ているとダリルに声をかけられた。


「シェーンにテントに行けって言われて、ダリルのテントを少し借りてたんだけど...壊れてたから直したの。
...ごめんね⁇借りちゃって。」


「そしてあたしは服の裾で、クロスボウについたウォーカーの血を拭い、ダリルに渡した。」


「...使えるんなら持っておけ。
それと...テントには入るな。」


ダリルはそう言うとそのまま自分のテントに戻って行った。


「メイ、戦ってくれてありがとな。」


きっと私とダリルの会話を聞いてたであろうシェーンが話しかけて来た。


「ねぇ、メルルはどうしたの⁇」


私はシェーンを無視し、近くにいたリックに聞いた。


「奴はもう居なかった。
...腕を切り、焼き、俺達の乗ってきた車を盗んで何処かへ行った。」


「...そう。」


私はそう言って、昨日と同じ木の下で再び眠った。

またウォーカーが来たとしても別にいい。

こんな世界で生き続けるぐらいなら、死んだ方がマシだ。


翌朝、目が覚めると布切れがかけられていた。

...よく見ると、どうやらダリルの服みたいだ。


「袖はないし、こんな薄手の物...」


私はつい、吹き出して笑ってしまった。


「...ダリル⁇」


テントの中のダリルに声をかける。


「お前か。
あんなとこで寝るぐらいなら、俺に怒鳴られてもテントの中に来い。
...口は悪いが、理由もなく弱いやつに手はださねぇよ。」


ダリルは中から覗き、私だとわかるとそう言った。


「ありがとう。
でも...風邪引いちゃうよ⁇」


上半身裸で寝ているダリルに私は先ほどまでかけられていた服を渡した。


「お前がな。
...馬鹿は風邪ひかねぇんだよ。」


ダリルはそう言いながらも服を受け取った。


今日がママとの約束の日。

今日を迎えたら、自然と少しは吹っ切れるって思ってた。

きっとダリルとなら適当な距離でやっていける。


...強くなろう。



私はそう決心し、徐々にみんなが集まり出したキャンピングカーの近くに私も行った。
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