like a rainbow
□タイム アフター タイム
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翌日、私はみんなに話す決心を固めて会社へと向かった。
今日は社内でのミーティングだし、みんなに話すにはちょうどいい。
父との間で全てを決めてしまう前に...みんなにちゃんと話してから答えを出すべき、そう思ったのだ。
『今日は何についてのミーティング?
新しいツアー⁇』
部屋に入るなりそう話していたスコットとネイト。
『おはよう。』
そんな二人に挨拶をしてから、部屋の一番奥にある段ボール置き場に行き、"ソフィー"と書かれた4つの段ボールを開けて中身を覗き込んだ。
そこにあるのはいつも通り大量のバレンタインチョコレートやプレゼントの山で。
こういうイベント期間には男女問わずチョコレートが送られてくる。
『女のソフィーの方が多いっていうのが複雑だよな。』
そう言ったハンターはどうやら段ボール3つ分だったらしい。
『でもわかんないよ?向こうにもたくさん届いてるだろうし。』
私はそう言ってハンターを慰める。
そしてひとつひとつ箱を開け、同封されている手紙とプレゼントを分ける作業をはじめた。
『それでも多分、ソフィーには負けるよ。』
ハンターはそう言ってため息をついた。
『資料持ってきました‼』
そう言って慌てた様子のミアが入ってくると、ミアは私たち3人にホチキスで閉じられた冊子を配った。
"シナモンズ日本デビュー3周年プロジェクト"
そう書かれた冊子の表紙に私はため息をこぼす。
そうだ。
3年前の4月10日...。
ワールドツアーの最終日にレンと再開して...その翌日、日本デビューと姉妹バンドについての会見を開いたんだ。
3年か。
『なんだかんだ俺ら、もう10年も一緒にいるんだもんな。』
私の隣でそう言ったハンター。
『うん。』
10年...だけどもうこれ以上はないんだ......。
そう思うと私はハンターに曖昧な返事しか返せなかった。
『スコット!ミーティングの前に少しだけいいかな?』
私はハンターの隣を離れ、スコットのところに行く。
『...すごく大事な話があるの。』
ちゃんと......みんなに話すんだ。
『あ...あぁ。』
そう言うとスコットは近くの椅子に座り、私の話しを聞く体制を作ってくれた。
『実は私......シナモンズを抜けようと思ってる。
シナモンズを抜けて、会社を継ぐ準備を始めたいの。』
私が抜けるという言葉を発した途端、部屋の空気が凍りついたのがわかった。
『おいおい‼』
『ちょっとまてよソフィー!』
『ソフィーさんそれは...』
ネイトやスコット、ミアからそんな言葉が聞こえたが、ハンターだけは黙っていた。
『ちゃんと聞いて?
...父とはもう話してるし、父は新メンバーを入れても解散でも、私達の好きなようにって言ってる。
もし解散になったとしても、スコットとミアにはちゃんと他の仕事を与えるとも言ってくれてるの。』
『だけどソフィー‼』
『だからって...』
『でもソフィーさん!
『それで?』
まだ私に文句を言い続けるみんなだったが、そんなみんなを黙らせるかのようにハンターが言う。
『ちゃんとみんなに話してからじゃないとって思って、最終的な返事はまだしてないんだけど...あとは父に返事をするだけなの。
......そしたら4月には、私はシナモンズを抜けることになる。』
私がそう話し終えると、みんなは静かになった。
『......だからこの3周年プロジェクトは...必ず成功させたいと思うの。』
『ソフィー‼
俺らはまだ、ソフィーがシナモンズを抜けることを受け入れてもねぇんだぞ⁈
俺らの気持ちも少しは考えたのかよ⁇』
立ち上がり、私に向かってそう言ったネイト。
『......考えたよ、ネイト。すっごく考えた。
悩まないわけないじゃない。』
『今じゃなくても、もっと先でもいいんじゃないかってずっと考えてた。
だけど私が父の娘であることは事実だし、いつか会社を継がなきゃいけない事も絶対に変えられない。
そう思った時、シナモンズを抜けるのを先延ばしにすればするほど...私は2人の未来を縛る事になるって思ったの。
でも今なら...新しいバンドを組む事も出来るだろうし、全く他の仕事も出来るはず。
......ちゃんと考えた結果だよ。』
私がそう言うとネイトはそのまま外へと出て行ってしまった。