like a rainbow
□ギルティ
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「それで?本当に何しにきたんだよハゲ。
イチャつきに来ただけじゃねぇだろうな⁇」
ビール片手にチョコレートケーキを食べながら言ったナナ。
「俺はお前を連れ戻しに来たんだ。
帰って来いよナナ...レンの所に帰りたくねぇんならせめて寮に帰ってこい。
ここは無用心だし《♪〜♪〜♪〜》
ヤスが私を叱る時のようにナナちゃんに説教を始めた時、カバンに入れていた携帯が鳴りだす。
サブディスプレイで名前を確認すると、発信者はもちろん父で。
「ちょっとごめん!」
私は話の途中で席を立ち、そのまま携帯を持ってハチの部屋に行き、何もない部屋の壁にもたれながら電話に出る。
『...もしもし?』
『俺だ。さっき電話くれてたろ⁇
ちょうど今までミーティングしてて、出れずに悪かった。』
『うん......メールのこと、詳しく聞きたくて。』
私は父にそう言った。
『メールに書いた通りだ。
もしお前が了承するなら...3月には間に合わないだろうから...
そうだな......4月、早くて4月頃には、お前はクッキーミュージックの社長になる。
ほんとは...その時がくれば俺のそばで勉強させようと思ってたんだが、予定変更だ。』
ペラペラと自分の脳内に描かれた未来を話しはじめた父。
『......シナモンズは?』
一番聞きたかったことを父に尋ねる。
『解散か、おまえが脱退して新メンバーを入れるか。
ただでさえ理不尽な思いをさせるんだ。
...ハンターとネイトの意思を尊重しよう。』
父はちゃんとハンター達のことを考えてくれてるみたいだ。
『スコット達は?』
彼らだって、シナモンズの一員なんだ。
中途半端な扱いはできない。
『もちろん彼らの意思も尊重する。
シナモンズが存続するならそのまま、存続しないのなら、他のアーティストの所に配属させるさ。』
『わかった...もうひとつだけ聞かせて?
父さんのそのビジョンは......私が生まれた時から持っていたの⁇』
『あぁ、ざっくりとはな。』
父がそう言ったおかげで、あの人にはもう何を言っても無駄なんだと確信し、もうすぐそこまで答えが見えた。
あとはもう、私が気持ちにケリをつけるだけなんだ...。
『わかった、もう少し考えてみる。』
『もし引き受けてくれるなら...なるべく早いうちに成田とシナモンズと話す時間を作ろう。』
『ありがとう。』
そう言って父との電話を切って、ハチの部屋を出た。
「ソフィー、どうかした?」
私が部屋に戻るとそう言ったヤス。
どうやらナナはここを出て寮に帰ることにしたらしく、ハチと一緒に自室の扉を開けっ放しにして荷物をまとめているようだ。
「あ〜うん、大丈夫。
父さんと話さなきゃいけないことがあって、ちょっとね。」
そう言うとヤスは小さく頷いた。
「あのことだけど...誰がばら撒いてるかわかったの。
今更遅いかもしれないけど......私なりに色々してるつもりで。」
「ちょっと待てよソフィー、あの事って「あの事だよ...レイラの部屋で過ごした夜の事。
正直傷ついたんだからね?よりにもよってレイラの部屋を指定した事。」
「けどそれはあいつが「別にいいよ。
ヤスを責めたいわけじゃないし。
......ただ私はもうこれ以上見て見ぬふりはできない。」
ヤスはサングラスを外して、小さくため息をこぼす。
「見て見ぬふりか......俺にできる事は⁇」
優しくそう言った彼に私は首を振る。
「なにも。
ただ...見守っててくれればそれでいい。」
私がちょうどそう言った時、ナナとハチがリビングへと戻ってきた。
「ってことで私、ホテルに戻るね?
...バーはまた今度行こう⁇私ちょっと寝不足気味なの。
ハチ、ノブにはあげられないから友チョコあげるね。」
そう言って彼女にチョコの箱を持たせ、一方的に707号室を出ると、タクシー会社に電話をかけながら、下の階へ続く階段を降りた。