like a rainbow
□ギルティ
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翌朝、部屋の内線に起こされるとミアが衣装の回収にやってきた。
チェックアウトまであと1時間を切っているため、ヤスも巻き込んで慌ただしく片付けを始める。
「そうだヤス‼
実はハンターとネイトが9日の夜にあるCyndi のシドニー公演のチケットをくれて、メンバーとネイトの彼女で行くつもりだったんだけど、ハンターがヤスにってチケット譲ってくれたの。」
私はクリスマスプレゼントの存在と、ハンターの気遣いについてヤスと話す。
「本当に⁇
ハンターさん、太っ腹だなぁ。」
ヤスはそう言うと、"あとでお礼を言うよ"と言って私のココアセットをカバンに戻してくれた。
「だから今日はこっちで過ごして明日シドニーに移動するのはどう?」
「親父さんは⁇」
「8日の夜、事務所兼マンションで食事だよ。」
そう言った私に納得した様子のヤスは満足げに頷く。
それからさらに慌ただしくチェックアウトを済ませた私はミアに荷物を預け、昨日と同じようにハイヤーで移動した。
向かった先はゴールドコースト最大のショッピングモール。
別荘で過ごすための日用品や服を買い、食事をしてからハイヤーに戻る。
車に戻ってからは全く人にバレずに買い物を終えたことをヤスと2人で笑いあった。
「ここじゃみんながオーストラリア人で私は目立たないし、ヤスはスーツにサングラスにその頭だし...きっとボディーガードだと思ったんだよ。」
私はそう言ってヤスの方を向く。
「ボディガードねぇ...。」
そう話している間に別荘に着き、私とヤスはスーツケースの他にいくつかのショッピングバッグを持って家の門へと入った。
ヤスと一緒に別荘で過ごす1日はとても充実した時間だった。
別に大したことをしてたわけじゃない。
...ただ一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、歯を磨いて。
一緒に起きて二度寝をした。
ただ当たり前のことをしているだけでも、2人一緒ってだけでその価値は倍になる。
二度寝から目が覚めると、大きすぎるキングベッドにヤスは居なかった。
時計を見ると11時を回っている。
私はベッドの脇に落ちているTシャツとズボンを履き、リビングへと向かった。
リビングに近づくと、小さな音が聞こえてくる。
「おはようヤス。」
そう言いながらリビングに隣接するキッチンに立つヤスをみると、ヤスは昨日買ってきた食材で食事を作っていた。
「起きたんだ。」
ヤスは目線を私に移して言う。
「起こしてくれて良かったのに。」
そう言いながらも私は冷蔵庫からお水を出して飲んだ。
「朝食出来たら起こそうと思ってた。」
そう言いながら私にフライパンの蓋を取って見せたヤス。
そこには綺麗な二つの目玉焼きとベーコン。
さらに作業台に置かれたお皿の上には細切りキャベツときゅうり、トマトが綺麗に並べられている。
「美味しそう‼」
「あとはココアとコーヒーだ。」
ヤスがそう言ったので、洗い上げられたコーヒーポットを持って、キッチンの反対側のコーナーにあるコーヒーメーカーを確認する。
昔は父が使っていたし、きっと使えないことはない。
コンセントを差し込み、昨日買ったコーヒー豆をセットしてスイッチを押した。
全自動で豆が挽かれ、ガラスのポットへ少しずつコーヒーが抽出される。
どうやらちゃんと使えるようだ。
どうやらヤスは目玉焼きの盛り付けが終わったらしく、私のココアに取り掛かってくれていた。
ホテルではキッチンが無かったため、久しぶりの本格ココアだ。
「あ、俺作るからソフィーは座っててよ。」
ヤスはそう言ってくれた。
久しぶりのヤスのココアに私は嬉しくてつい微笑んでしまう。
ヤスに"ありがとお"と返してリビングに太陽の光を入れるため、カーテンを開けた。
「あ!
昨日水着買えば良かったね。」
ビーチに出るのは無理だと思っていて、ハナっから水着の事なんて考えていなかった私。
「なんで⁇」
不思議そうに言ったヤスに窓の外を指差した。
「あそこ、今は水抜いてシート被せてるけど本当はプールなんだよ?」
子供の頃に数回入ったことのあるプール。
そんなに大きいわけじゃなく、15メートルほどのプールだけど遊ぶには十分だ。
「プールまであるのかよ‼」
そう驚いたヤスに私は"まぁね"と返した。
そうしている間に私のココアができたらしく、ヤスは自分のコーヒーと私のココアを持ってテーブルに持ってきてくれる。