like a rainbow

□思い出の場所
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それから半月ほど過ぎ、シナモンズは平日に店舗イベントやラジオ、週末になると都心でライブを行った。

私がもっと仕事がしたいと言ったこともあり、益々忙しくなった仕事。


1週目の国内チャートではブラストに次いで2位となったが海外チャートでは1位をキープ。

国内でも2週目には1位にランクインした。

もしブラストが世界進出したらすぐに追いつかれてしまうんじゃないかと思う。

きっとサーチの影響が大きいのだろうけど、話題だけで負けてしまうのだから驚く。


ヤスやブラストから離れるのはすごく簡単なことだった。

数日前、"巡業から戻ったら新しいマネージャーが来てたんだけど、美里ちゃんだったよ。"とメールが来たが"お疲れ様"とだけ返信し、それ以上は何も言っていない。

...簡単に離れられたからこそ複雑な気持ちになる。

こんなに簡単なんだ、って。


首にぶら下がってる婚約指輪は何の効力もなく、ただの指輪なんだってことを痛感した。


ラジオ局への移動中はみんなお互いが黙りこくり、シーンとした中ハンターが口を開いた。


『ソフィー、ネイト、例の映画用の曲書いてみたんだけど見てよ。』


ハンターが私の頭からすっぽり抜けていた新曲を書いてくれたらしい。


『全部英語か?』


ハンターが見せてきた紙を覗き込んだネイトは言った。


『映画挿入歌だし、向こうからの依頼だろ?

こっちで歌うかは別問題だ。』


ハンターの書いてくれた曲は悩める女の子への歌で、所々の歌詞が私の胸に突き刺さった。


『......ハンターって、何者なの?』


『え?』


『こんな歌詞、よく付けれたね。』


あまりにも女の子の心情を真っ直ぐに表現された歌詞に、私はハンターを不気味に感じてしまう。


『ダメかな?...主にソフィーを見てて思ったことを書いたんだ。

ほら、今のソフィーに恋愛ものの映画挿入歌なんて書けないだろ⁇

原作にも目を通してないくせに。』


そう言ったハンター。


確かにそうかもしれない。


『ありがとう...で、どんな映画だったの?』


私はハンターに笑顔で言った。


『田舎町に住んでた幼馴染同士が恋人になるんだけど、就職で女が地元を離れ、遠距離になって自然消滅。

数年してお母さんが倒れたのをきっかけに地元に戻った時、幼馴染同士で再会するんだ。』


スラスラと内容を話してくれたハンター。


『うちの曲は遠距離生活でのすれ違いのシーンで使われる。

...続きが気になるなら本貸すけど?』


そう言ってハンターは自分のリュックの中を漁り、綺麗な表紙のペーパーブックを差し出す。


『読み物もたまにはいいかもね。』


私はそう言ってハンターから本を受け取る。


ラジオの打ち合わせが終わり、コントロールルームに入ると上機嫌で生放送中のノブがいた。


中にノブが居るとわかったハンターとネイトは嬉しそうにガラス越しのノブに手を振る。


ノブは少し動揺し、セリフを噛みそうになったが順調そうだ。


そんなことをしている間にノブの出番は終わり、ブース内から出てきた。


ノブとDJさんが出てきてスタッフさん共々入れ替わる。


「ソフィー、少しいい?」


「少しってノブ、あと4分で始ま「廊下で話すだけだ。3分で済むよ。」」


ノブはそう言うと私の手を取り、廊下へと連れ出した。


「ヤッさんとはどうなってんの?

ヤッさん、誰にも本音は話してねぇけど、ずっとパソコンでメール確認してるよ。」


珍しく私に怒ったノブ。


「少し複雑なんだよ。」


「複雑とか言わずにさぁ...メールぐらい返してやれよ。

その気が無いなら無いで解放してやれよ...ヤッさん、寮の子に気に入られてっけどずっと気付いてないフリしてんだ。」


「そういうもんじゃないんだよ...。」


「とにかく、30日の夜にハチの誕生日パーティーやるんだ。

......俺は行けねぇからせめて行ってやってよ。」


私が何も言えないでいると、そう言ったノブ。


「それって理不尽だよ!」


自分だって都合が悪くて行かないくせにそんなのおかしすぎる。


『ソフィー本番...』


私を呼びに来たハンターが廊下に顔を覗かせる。


『そういうことだから...。

ソフィー借りて悪かったな、ハンター。』


ノブは私の言葉なんて一言も聞かずにそう言って廊下を歩いて行ってしまった。


自分だって行かないくせに...。


だけど誕生日だけでなく、先日サーチによって遂に結婚したことが世に出たハチをちゃんとお祝いしてあげたい。


私はため息をつき、その後で大きく深呼吸をして気分を入れ替えてラジオに挑んだ。
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