like a rainbow

□飛び交う噂
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「それで...ソフィーさんの婚約者さんはどのような方なのですか⁇」


あの記事のせいで私とレンが付き合っているという噂はあっという間に広まり、私はレギュラーのラジオの終盤で婚約者がいる事を話すことになった。

もちろんスコットは反対していたが噂の収集がつかなくなり始めた為、妥協策として渋々OKを下したらしい。

まだ父にすらヤスを紹介していないが、スコットは上手いこと言ってくれたみたいだ。


「彼は私よりも背が高くて頼りがいのある人です。」


「...では、トラネスのレンさんとは交際していないってことですね⁇」


思っていた通りの質問。


「えぇ、レンは大事な仕事仲間です。

あの写真はレンの家で複数の友人とビデオ鑑賞会という名の食事会をしてたんです。

まぁ、この番組の日だったので一人遅れて行ったらもうみんな出来上がってましたけどね。」


私はレンとの噂をはっきりと否定し、た。


「このラジオ終わりで行ったんですか〜?

それなら出来上がってても仕方がない‼

それでは最後は私オススメのシナモンズの恋愛ソングでお別れです。

また来週、お会いしましょう‼」


口の上手いラジオDJさんはそう言って番組を閉め、マイクのスイッチを切ってシナモンズの曲を流す。


私も一度ヘッドホンを外し、ため息をこぼした。

真向かいに座るDJさんはお疲れ様と笑いながら、机に広がった書類や荷物を片付け始めたが、私は放送が終わった安堵から手伝う気にはなれなかった。


横にいたハンターはお疲れ様と言って肩を揉んでくれる。


『緊張した〜。』


私はそんなハンターにそう言い、綺麗になったばかりの机の上に突っ伏した。


大きなハンターの手でされるマッサージは心地がよく、すごくリラックスできる。


『...でソフィー、今日は搬入口に車を回すから。

正面も裏もえらいことになってるだろうしな。』


スコットはそう言った。


きっと放送を聞いたファンやパパラッチがここに押し寄せているに違いない。

スコットのその気遣いに私は頭が下がる一方だった。


みんなで行きつけの個室レストランで食事をとってホテルに戻ると私は、荷物を降ろすと私は1番にお風呂に入った。


いつもはシャワーで済ませてしまう私だが、緊張してしまった今日はゆっくりと湯船に浸かって疲れを取りたい。


...そういえばさっきヤスからメールが来てたっけ。


【背が高くて頼りがいがあるねぇ…。

素直にかっこいいとか言ってくれればよかったのに。】


短いメール。

きっとヤスはラジオを聞いていてくれたのだろう。


お風呂を上がったらメールを返さなきゃ。

そう思いながらも私は浴槽の中で鼻歌を歌った。




ミアに言われた通りのスキンケアやマッサージ、柔軟をし終えてから携帯を確認すると他にもたくさんのメールが届いていた。


【ソフィーさん婚約したんですね‼
おめでとうございます。

またブラストのライブで東京に行った時、色々聞かせてくださいね?】


【ソフィー、婚約おめでとう。

タクミがあたしのことを話したって言ってたけど聞いてるかな?

707号室は引っ越しちゃったけどまた会える日を楽しみにしてるね。】


【おいソフィー、お前いつハゲと婚約したんだよ。

それにお前は俺の仕事仲間じゃねぇ、ライバルだろ?】


【Happy Engagement‼】


【ソフィーさん、ラジオ聞きました。

婚約おめでとうございます。
僕の周りでは最近、婚約や結婚ブームが起きてるんですが、婚約ってそんなに良いものなんでしょうか?

ノブさんに聞いても教えてくれないのでソフィーさん教えてくださいよ。】



美里ちゃんにハチ、レン、ナオキ、シンちゃん。


とてもじゃないけどみんなに返事をするのは大変。


でもそんな中、レンの"ライバル"という文字だけが凄く引っかかる。

大事な仕事仲間と言ったけれど本音を言えば私はレンの姉だ。


そんなモヤモヤを隠す為にも私はヤスに電話をかけた。


「もしもし?」


電話が繋がるとヤスの優しい声が聞こえる。


「かっこいいなんてもちろんだよ。」


「ぷっ……っははは」


電話の向こうで思い切り笑ったヤス。


きっと本気に受け取ったのだろう。


「それよりヤス、お祝いメールが凄いんだけど。

美里ちゃんにハチ、ナオキ、シンちゃん、レンからも。」


「そりゃずーっとニュースで流れてんだ。
いろんな奴の耳にも入るよ。」


「うっそ‼もう⁇」


そう言われ、私は急いでテレビをつけた。
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