like a rainbow
□お仕事
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そして次の日、私は地元のレンの家へと向かった。
ヤスは着いてくると言い張っていたが「あんまり早く出戻りするとミヅエが心配するよ⁇」と言うとヤスはため息をついて引き下がった。
ヤスと眠たい目をこすりながら食べた冷凍のコロッケを挟んで作ったコロッケパンは思ったより貧血に聞いているらしく、少し顔色がしっかりとしたような気がする。
私は移動中の新幹線の心地よい揺れのおかげで少しだけ居眠りをしてしまった。
周りがざわつき始め、終点に着いたことに気づかされ、焦って電車を降りる。
それから駅前でタクシーを拾ってレンの倉庫へと向かった。
「すみませんが、1時間後にまたここに来てもらえませんか⁇」
タクシーの運転士さんにそうお願いをし、レンの家へと入った。
久しぶりに入ったこの倉庫には昔の"遊び場"の面影がすでに無く、すっかり倉庫から家へと変わっていた。
所々におしゃれさが加わって、本当にナナと住んでたんだなって思わされる。
そして壁際の隅っこに見覚えのあるギターケースを見つけた。
4年前、私がオーストラリアに行く前にレンに置いていったギターのケースだ。
その横には数冊のコードブックが置かれている。
ほとんどがパンクなのにもかかわらず、1冊だけ"色褪せない名曲全集"と言うタイトルの本があった。
パラパラとめくってみると、True colors のページにしっかりと折り目が付いてある。
きっとレンが弾いていたのだろう。
私はギターを手に取り、軽く弾いてみた。
《You with the sad eyes don’t be discouraged oh I realize〜♪
It’s hard to take courage...》
そこまで歌って私はギターを置いた。
歌えないんじゃなく、歌わなかった。
今この歌を歌えば私は元気付けられ、現実から目を逸らし、私は立ち直れるかもしれない。
だけどここで立ち直ってしまえばこれから先、ずっと辛い思いをし続けることになる。
ずっと...自分に嘘をつき続けることになるんだ。
それこそ本当の《Guilty》だ...。
私はそっとギターを戻して、レンの言っていた本棚を探した。
きっとこれの事だろう。
たくさんの音楽雑誌やエッチな本、漫画と並んで一際雰囲気の違う一冊の本があった。