like a rainbow
□出会い
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私はずっとブルートのボーカルでいたかった。
アルトとタイガとレンとヤスと私……。
売れてなくたって、みんなと居れる。
たったそれだけで満足だったんだ。
あそこには私の居場所があったんだから。
だけどもう、ヤスもレンも…
アルトもタイガも私の事なんて覚えてないよね⁇
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小学6年のとある冬、私は異国に引っ越した。
住む所は文化の違いのせいなのか、土足禁止の狭いアパート。
確実に質の落ちた新生活にゲンナリする私とは裏腹に母は私に嬉しそうに簡単な日本語を教えてくれた。
『こんにちは、私はソフィーです。よろしくね。』
小学校に転入する日の朝、私がママから叩き込まれた挨拶。
なんとか言えるようにはなったけれど、意味なんて全くわからない。
だが転入初日、私は言われた通りの日本語を話したにも関わらず、周りからはバカにされた。
...もうやだよ。
オーストラリアに帰りたい。
親友のエマやジェシーに会いたい。
パパに...会いたい。
先生が私に何かを言っているみたいだけど、私には意味がわからない。
...どうすればいいんだろう。
『座れって。』
私が困っていると、すぐ目の前に座っていた男の子が英語で言ってくれた。
私は彼に「あり...が......と...お?」と覚えたばかりの日本語でお礼を言った。
今思えばすごく下手くそな日本語だった気がする。
だけどヤスはそんな事なんて気にせず、私に微笑みかけてくれて。
私はその時やっと生きた心地がしたんだ。
これが...私とヤスの出会い。
それから私はクラスの子とはあまり仲良くできず、ヤスといるようになった。
先生もヤスに任せておけばいいと思ったのか何も言ってこなかったし、毎年ヤスと同じクラスになることができた。
だからいつの間にか…ヤスの隣が私の唯一の居場所になっていた。
担任の先生が教えてくれる日本語は難しく、ママも夜遅くまで仕事。
毎日の宿題に困っていた私は毎朝早くに学校に来てヤスに教えてもらう毎日。
それは中学に入ってからも変わらない。
クラスのイジメはエスカレートするばっかだし、日本語の授業のせいで勉強だってついていけない。
唯一の救いはパパが音楽プロデューサーで音楽に触れて育ったってこと。
…だから音楽の授業だけは成績が良かった。
月日は経ち、中学2年生になったとある春の日の朝…いつもと部屋の様子がどこか違っていた。
目が覚めた時にはいつもあるはずの朝食がそこにはなくて、ママの布団は昨夜のまま綺麗に畳まれている。
不思議には思ったけどヤスとの約束に遅刻するわけには行かず、私は身支度をすることにした。
制服に着替え、洗面所にヘアスタイルを確認しにいく。
だが扉を開けるとそこには......
......手首から血を流したママが居たんだ。
「ママ⁈ママ⁈⁈」
どうしていいか分からず、私はそこを動く事ができない。
必死に揺すっても叩いてみても、冷たくなったママは目を開けない。
私はカバンも持たなければ靴も履かないまま、ヤスとの約束の公園に行った。
ヤスとの約束の時間はもうとっくに過ぎている。
「ソフィー⁇」
すでに来ていたヤスは私の顔を見るなり、名前を呼んだ。
「...ヤス...っ...」
『ソフィーどうした⁇なんで泣いてんだよ。
カバンは⁇靴は⁇
ソフィー......どこか怪我したのか⁇』
紺色ブレザーに血が付いていることに気がつくと、ヤスはそう言って私の体をさすって確認する。
何も言わず震える私を落ち着かせるように、ヤスは私に強引なキスをした。
少し落ち着きを取り戻した私はヤスに経緯を話すと、ヤスは私に自分の靴を履かせてヤスの家まで連れて行ってくれた。
『こっちだ。』
ヤスは私の制服を捲り上げ、絡みついたママの血液を流し終え、リビングに通してシナモン入りのホットココアを出してくれる。
その後ヤスはヤスのお義母さんを連れて来てくれて、ゆっくり話しを聞いてもらう。
そこはなんだか居心地がよく、それから私は1週間近くヤスの家に入り浸った。
「なぁソフィー、さすがに限界だってさ。」
ある日の朝、なかなか寝付けずにヤスの部屋のコンポにイヤフォンを差しこんで、部屋にあったお気に入りのCDを聞いているとそう言われた。