暗闇の先に
□26,変化の時
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「3日後に決まりそうだ…。」
私より一足先にサンドウィッチを食べ終えたダリルは小さな声でそう言った。
「3日後?」
「あぁ。
今日、出かけたのはその返事をもらうため。
アレクサンドリアとヒルトップ、そして王国。
それぞれ戦う準備が整いはじめてる。」
「そっか。」
私はそれ以上なんて答えたらいいのかわからず、ただそう返事を返した。
「不安か?」
心配そうに尋ねてきたダリル。
「……分かんない。
どうするべきなのかずっと考えてたけど、何が正解かなんて答えは出てきやしない。」
その言葉を聞いたダリルはそっと私のことを抱き寄せた。
「自分が無理な時は無理に誰かを守ろうとなんてしなくていい。
特に俺は放っておけ。
…自分の命さえ守っていればいいんだ。」
私を引き寄せ、抱きしめているダリルは私の頭の上でそう言った。
私を落ち着かせるための言葉だって頭のどこかではわかっていながらも私の心にはダリルのその言葉が強く刻み込まれていく。
いつもなら”そんなこと…”って言えたのかもしれないけど余裕のない今の私にはそんな風に言うことは出来なかった。
「ありがとう。」
私は納得がいかないながらにもそう呟いて顔をあげ、すぐ上にあるダリルの唇にキスをする。
顔を話しして目を開けたその時、ダリルが私に向けて笑みを浮かべたのが見え、甘い空気が流れた始めたその時、向かいの木々の間から唸り声が聞こえてきた。
「ゥヴァアアァー…」
ぶち壊されたムードに笑い合いながら私は紙袋と水筒を、ダリルはナイフに手をかけながら立ち上がった。
ウォーカーの脳天を一発で仕留め、ウォーカーの服で血を拭いたダリルがバイクの元へ戻ってくると私たちは王国へと再出発した。
それからダリルと王国にやってきた私は国王の元へと案内された。
ダリルが国王と話している間、私は国王のペットだという虎の檻のすぐそばに腰掛け、じっくりと観察しながら2人の会話に耳を傾ける。
「進行状況は?」
「訓練はいつも通り新人もしっかり訓練してる。
車は今日中には目標数に達成予定だ。」
「そうか。よかった。
リックが大幅な遅れが無いようなら3日後に実行すると。
明後日の14時、連合軍で決起集会を開き作戦を参加者に伝えるから来てくれとリックが。
もしまだ準備に時間がかかるようならその場で作戦を立て直すって。」
「おそらく間に合うだろう。
明後日、行けばいいんだな?」
「あぁ。
群れをサンクチュアリに誘導し、サンクチュアリを監視もろとも狙撃。
サンクチュアリの入り口を爆破させ、ウォーカーを雪崩れこませる。
そして救世主の拠点を襲撃するって手順で決まったそうだ。」
「…異議は無いよ。
その作戦でいこう。
ところで彼女は確かあの時の……」
そんな声が聞こえ、話題の中心が私に変わったことが伺える。
後ろを向いていてわからないが、きっと2人はこっちを向いているんだろう。
足音がだんだんと近付いてきたことが分かった私は後ろを振り返り、2人に微笑んだ。
「メイ、王国のリーダー、エゼキエル...とシヴァ。
エゼキエル、彼女はメイ。
俺の妻だ。」
ダリルが私のことを妻と紹介してくれるのは初めての事なので、なんだか少し照れてしまう。
私が全力で笑顔を作りあいさつをすると、エゼキエルさんも笑顔で返してくれた。
私がエゼキエルさんと挨拶を済ませてる間にダリルはトラのシヴァの檻の側に行く。
そして驚くことにシヴァの檻へ手を入れたダリル。
「ダリル⁈」
「平気だ。おとなしい。」
どうやらシヴァはダリルに撫でられるのが好きなのか気持ちよさそうに首を傾けている。
そしてシヴァはゆっくりと立ち上がるとダリルのそばを離れ、私の正面へとやって来て私の近くに自分の首元を持ってきた。
「どうやらメイにも撫でてほしいみたいだな。」
エゼキエルは私とダリルに笑顔を向けながら言った。
「...本当に大丈夫?」
私は戸惑いながらもシヴァの檻へ少しずつ近づく。
本当に大丈夫なのかとダリルやエゼキエルの顔を順番に見るが、2人とも笑顔を浮かべて頷いていた。
そんな2人のことを信じ、私はゆっくりと歩みを進め、そっとシヴァの檻へ手を入れ、ゆっくりとシヴァの首元から背中にかけて撫でる。
シヴァはゆっくりと呼吸をしながらも、大人しく横になっていた。