暗闇の先に

□3,生きる意味
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Tドックの傷を見るハーシェルに尋ねる。


「...カールはどうなんですか⁇」


「正直厳しいよ。
砕けた弾があと5つもあるんだ。
カールの状態も良くないし、道具を取りに行った2人も帰って来ない。」


きっとシェーンだろう。
...だけど、あと1人は誰⁇

まぁいい。

「何か手伝えることは⁇」


「今は2人の決断を待つしか出来ない。」


ハーシェルはTドックの手当てをしながらも、話を進めてくれる。


「なぁメイ、君の怪我は平気なのか⁇」


「平気よ。」


グレンは私に言った。


「見せてみろ。
手当てしてやる。」


「本当に大丈夫。
もう傷口も塞がりかけてるし今触るのは逆に良くないと思う。
...ただガーゼが余ってるなら少し分けてもらえると助かるわ。」


私がそう言うと、マギーは引き出しからガーゼを出してきてくれた。


「...ありがとう。
洗面所を借りても良い?」


「えぇ。好きにしてちょうだい。」


私はマギーの許可を取り洗面所を借りる。


一度水で傷口を洗い流し、ダリルのくれた薬を塗ってガーゼをする。

ここの洗面所はどうやらポーチに隣接しているらしく、外の声が筒抜けだ。


『こんな世界、子供が生きる世界じゃないわ。
今死ねばこれ以上苦しまなくて済むのよ。』


『カールが目を覚ました時、鹿の話をした。
それは生きているから見れたんだ。
こんな世界でもあの子はちゃんと成長している。』


『ジャクイルのように、苦しまないように死ぬ方が...その方が良いのかもしれないわ。』


正直、ローリの考え方は馬鹿げてるとしか思えない。

私も初めはそうだった。


...けどここの人達と生活していくうちにこんな世界も悪くないって思い始めた。

カールだってこんな世界でもお父さんと再会できたり、今は行方不明だけどソフィアという親友だってできた。

カール自身がちゃんと"生きてる"のに親が諦めるなんてどうかしてる。

私達は生きる意味があるから生きてるはずなんだ。


私はこれ以上聞いていることも出来ずに先ほどの部屋へと戻る。


「今夜、君には私のベッドを貸そう。」


ハーシェルは私に言った。


「私は大丈夫よ。
体調を崩してるんだから、Tドックに貸してあげて⁇」


私はハーシェルにそう言った。


「メイ、俺は「病人はちゃんと休まなきゃ。」


反論しかけたTドックに私はそう言う。


「ねぇハーシェル、さっきも言ったけど私に手伝える事はある⁇
看護師助手として働いてたの。
雑用ぐらいなら手伝える。」


「...そうか。
なら手伝ってくれると助かる。
これから朝にかけてきっと大手術をする事になる。」


ハーシェルは私の顔を見ながらはっきりとそう言った。


「...君とグレンの血液型は⁇」


ハーシェルは一呼吸置き、私達に質問した。


「僕はAB型。」


「A型よ。」


「...じゃあメイ、君の血をカールにやってくれ。

足りてないんだ。...唯一、血液型の同じ父親もフラフラだ。」


輸血って...。

ちゃんと検査してないのに...拒絶反応が起きたりしたらどうするつもりなのだろう。

もし手術で助かったとしても、拒絶反応で死んでしまうこともあり得る。


「...拒絶反応を起こしたらどうするの⁇」


「きっと大丈夫だ。
血が足りなくて死ぬより、血があって死ぬ方がマシだろう。」


ハーシェルはそう言ってカールの寝ている部屋へと行く。


「...どうかしてるわ。」


「仕方無いんだよ。
それしか方法はない。」


私の言葉にグレンはそう言った。



そして結局、リックとローリーは手術をする事に納得をし、私の輸血を受けさせることにも納得した。

...全てが一か八か。

大きな掛けだ。


「もう時間は限界だ、リック...どうする⁇」


ハーシェルはリックに尋ねる。


「やってくれ。」


ハーシェルはリックのその言葉を聞き、私の血を抜いて手術の準備をし始める。


「君はカールの状態確認と器具を私とパトリシアに渡してくれ。」


血液を取っている間に私は説明を受ける。


...その時、車のエンジン音が外から聞こえた。

どうやらタイミングよくシェーン達が帰ってきたらしい。

ハーシェルは私をパトリシアに任せて外へ迎えに行く。


それからしばらくして、ハーシェルは、手術道具を持って帰ってきた。


「さぁ...始めよう。」
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