Philosopher's Stone

□5,深まるナゾ
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ロンに逃げ場がないとわかったハリーは杖を持ったまま走って行って後ろからトロールに飛び付き、杖をトロールの鼻の穴を突き上げた。


そのせいか唸り声を上げながら棍棒をメチャクチャに振り回しはじめたトロール。

トロールはしがみ付いているハリーを振り払おうともがき、いまにも棍棒でハリーに強烈な一撃を喰らわそうとしている。


「ハーマイオニー...少しずつ、あっちに行こう?」


そう言うがやはり彼女の足はビクともしない。


ロンやハリーの手伝いをしようとも、ギュッと握られた手を振り払うことはできない。


「『ウィンガーディアム・レビオーサ』!」


突然、耳覚えのある呪文が聞こえたと思えば、そこには杖を構えているロンがいた。


ロンの操る棍棒はトロールの手から離れ、空中を高く高く上がり、一回転した後で持ち主の頭の上に落っこちる。

トロールはフラフラしたかと思うと、ドサッと音を立ててその場にうつ伏せに伸びる。

そしてその衝撃で部屋全体が揺れた。


「これ...死んだの?」


やっとそう呟いたハーマイオニー。


「いや、 ノックアウトされただけだと思う。」


ハリーはそう答えながら立ち上がり、トロールの鼻から自分の杖を引っ張り出している。


引っ張り出したハリーの杖には灰色の糊の塊りのような物がベットリとくっ付いていた。


「いたっ...!?」


トロールを倒した安心感からか、急に自分の右膝が痛むのを感じる。


「サクラ、大丈夫かい?」


私を気にした様子のロンだったが、ローブをめくって足を確認して見ても目立つ怪我は見つからない。


「ちょうどこの痣のあたりなんだけど...少し痛むだけ。

たぶんどこかにぶつけただけだよ。」


そう思ってロンに笑顔を向けるがロンは黙って私の足を見ていた。


「ちょっとロン‼︎

女の子の足はそんなにジロジロ見るものじゃないわ⁉︎」


すっかり元気を取り戻したらしいハーマイオニーはロンの方を軽く叩きながら言った。


「ご...ごめん。

でも君、名付け親が居るんだね。」


ロンは私の足から目線をあげると、静かにそう言った。


「え⁇」


名付け親?いったい何のことだろう。


「きみ知らないの?

魔法界じゃ名付け親と申し子の誓いを立てると、お互いの守護霊の形の痣がの何処かにできるんだよ。

きみの場合は牝鹿じゃない?」


そう呟いたロン。


「守護霊の痣が痛むのは...相手の身に何かが起きた証って本で読んだわ。」


今度はハーマイオニーがそう言う。


私が今までその意味を知らなかった痣をジッと見ていると急にバタンという音がして、こちらへやってくる足音が聴こえてきた。


マクゴナガル先生が飛び込んで来た後でセブルスもやって来て、さらにその後にクィレル先生がやって来た。


そしてセブルスはトロールを覗き込んだ後で私をじっと見た。

だけどセブルスよりも先に私たちに声をかけたのはマクゴナガル先生だ。


「いったいあなた方はどういうおつもりなのですか!
殺されなかっただけでも運が良かった。

寮にいるべきあなた達がどうしてここにいるのですか?」


寮に?


「あの…「3人とも私を探しに来たんです。

今日、授業が終わってから外で探し物をしていたんです…。

それでここで手を洗ってから大広間に行こうとしてたら急にトロールが……。」


ハーマイオニーが何かを言いかけようとした時、私は言葉を遮って答えた。


マクゴナガル先生とセブルスは驚いたように私を見つめ、さらに隣にいる3人も同じように私の方を向いた。


「ハリーは杖をトロールの鼻に刺し込んでくれて、ロンはトロールの棍棒でノックアウトしてくれて、ハーマイオニーは、ただ立っていることしかできない私をここから連れ出そうとしてくれました。

3人とも誰かを呼びに行く時間が無かったんです。」


ハリーもロンもハーマイオニーでさえも”そのとおりです”という顔を装い、頷いている。


「まあ...そういうことでしたら。」


そう言って、私たちをジッと見た先生はその後すぐに口を開いた。


「ミス,春風、グリフィンドールから10点減点です。

そして先ほども言いましたがあなたたちは運が良かったのです。

おとなの野生のトロールと対決できる一年生なんてそうざらにはいません。

一人5点ずつあげましょう。

4人とも怪我が無いならグリフィンドール塔に帰った方がよいでしょう。
生徒たちがさっき中断したパーティーの続きを寮でやっています。」


マクゴナガル先生がそう言ったことで、私たち4人はそのまま真っ直ぐに寮へと戻った。
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