Philosopher's Stone
□2,異世界
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「おや‼
......おまえさんはいったいどこから来たのかね⁇」
すぐに私の存在に気がついたお爺さんは私にそう尋ねる。
そのお爺さんは優しい瞳をしていて、長い髭をベルトに巻き込んでいる。
そして私の目からは突然涙があふれ出した。
あれ?......私は一体、どこから来たんだろう。
手には誕生日に受け取るはずだったもらい猫とママのお守りのブレスレットをはめている。
「おやおや、泣くでない泣くでない。」
突然泣き出した私を不思議に思ったのか、お爺さんのペットと思われる赤い鳥が私の肩に止まる。
でもなんで私は泣いているのだろう。
すると不思議なことになんだか急に心が落ち着きはじめた。
それと同時に鳥に興味を示した猫ちゃんは鳥を捕まえようと私の腕からスルリと抜け出してしまう。
とっさに猫ちゃんを捕まえようとしたが身体に上手く力が入らない。
「どうやらフォークスは君の仔猫が気に入ったようじゃ。」
フォークスと呼ばれた鳥は猫ちゃんが届くか届かないかというギリギリの辺りで戯れるように飛んでいる。
「何か...酷い目に遭ったらしいのぉ......儂はアルバス・ダンブルドアじゃ。
まずはお前さんの名前を教えてはくれんかね?」
そう言ったお爺さんに私は頷きながらも涙を拭いた。
「サクラ...春風。
私はなんでここにいるの⁇」
「そうか......サクラ・春風、わしはおまえさんを探しておった。
ここはホグワーツ魔法魔術学校。
入学リストに名前は載ってたんじゃが何せ住所が書いていなくてな。」
魔法...。
そんなものがあるはずない。
これはきっと夢だ。
「ふぅん。」
夢だと知った私はとりあえずこの会話がどう進むのかを傍観する。
おじいさんは猫ちゃんをからかい終え、再び私の肩に止まった綺麗な美しい鳥に「セブルスとミネルバそれと...ポピーを呼ぶのじゃ。」と言った。
鳥が言葉を理解できる筈がないのに...夢ってやっぱりおもしろい......。
「もし良ければおまえさんの頭の中を少し見せてはくれんかね⁇」
突然そう言ったダンブルドアさんに私は驚く。
頭の中を見せる?
魔法で頭を裂かれたりでもするのだろうか。
意味がわからない。
私が考え込んでいるとダンブルドアさんは口を開いた。
「なぁに、痛くもかゆくもない。
こうして頭から記憶を引き出すのじゃ。」
そう言ってダンブルドアは杖を使って頭から糸状のものを引き出した。
本当に何もかもがわからない。
私は小さく頷く。
記憶が引き出される間私はギュッと目を瞑り、事が済むのを待った。
「ご協力ありがとう。」
ダンブルドアのその言葉で記憶を取り終えたのだと理解できた。
だが、私は途端にその場に座り込んだ。
「おやおや...」
おじいさんは私の身体を支えるようにして私に寄り添う。
こんな変な夢なんか、早く覚めて......ってあれ?
夢の中って、他人の体温を感じられたっけ⁇
私はますます訳が分からなくなってくる。
......それにさっきの涙。
あんな風に出るなんて......
「校長、我輩をお呼びですか?」
ちょうど、先程言っていたセブルスさんとミネルバさんが到着したらしい。
1人の男性が顔をみせると、すぐにもう1人も顔を出した。
「あぁ、セブルスにミネルバ......」
そして私はついに、意識を保てずに気を失ってしまった。
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気がつくと私はふかふかのベッドの上で寝かされていた。
ベッドサイドの間接照明の下にはお皿いっぱいに黄色いキャンディーが盛られている。
ドアは少しだけ開かれ、向こうの声が聞こえた。
「しかし校長、彼女はカミラの...あのお方の「セブルス、そんな事は分かっておる。
だがこのリストに名前がある以上、全員に入学資格は与えられる。
それにカミラはあの子をここに送り込んだのじゃ...わかるじゃろ?」
「カミラはあの子をマグルとして育てると言っていました。」
「だが、結果としてカミラはあの子をココに送り込んだのじゃ。
意味はわかっておろう。」
そんな声が聞こえ、つい先程起きた事を思い出してベッドから体を起こす。
あれは......現実だったんだ。
夢ならばこんなところで目を覚ます筈がない。