Smile once again!!
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粗方説明が終わり、ルッス姐とお話していた。
「カッター1本で大勢の大人を倒しちゃうなんて、凄いわねぇ」
『こう見えて、喧嘩は強いのよ。でも、自分でもびっくりしてるわ。あんなに小さいカッターでも、人って死ぬのね』
言い方も、声も、あっさりしていて、自分でも多少引いている。
ルッス姐も、ドン引きとまではいかないが、かなり引いている。
「“死ぬのね”って...
小陽南ちゃん、ワタシ、オブラートに包んだつもりだったのよ...」
『そのオブラート、剥いで捨てたわ。悪気はないの。ごめんね』
ニヤッと笑い、ふざけた調子で言うと、ルッス姐は笑った。
「やだ、小陽南ちゃんてば面白い子ね!学校では友達が沢山居たんじゃない?」
『そこまで淋しくないのよ。親友が1人いて、その子の分は淋しいけど、その他の奴らはどうだっていいもの。とにかく、こっちに来ちまったもんは仕方ないし』
微妙に噛み合ってないが、私的にはこの答えで正解。“淋しくないの”って、聞きたかったみたいだから。
「家族は?」
『居るけど、居ないも同然。嫌な奴らだったわ』
「嫌な事を聞いたのね。ごめんなさい」
『ううん。離れられてせいせいしてるから』
「でも、安心してね。今日からワタシ達が貴女の仲間よ」
とても暖かく、懐かしい言葉だった。
『ありがとう』
「ねぇ、小陽南ちゃんの親友の話、聞いても良いかしら?」
『えー、長くなるからまた今度ね。ルッス姐、もうすぐ着くって言ってたじゃん』
「なによ、いいじゃない。ちょっとだけよ。どんな子なの?」
もう既に聞く気マンマンだ。
うーん、なんだろうか。どんな子って……
さんざん唸って出た答えが、
『血は、赤い。人間の血の色してる』
よりにもよってこれだ。こればっかりはちょっと自分の精神を疑った。
こんなの姫瑚に知られたら絞め落とされる。
と、思ったところで気付く。
ここは、自分が今まで居た世界とは違うのだ。つまり、この場に姫瑚はいない。もう会えない可能性が高い。
実感して、後悔した。なんでこの話題に乗ったんだ。淋しい、とは思いたくなかった。会えないのだとしたら、忙しい日々にかまけて緩やかに忘れてしまいたかった。
自分、最低だな。うっすらと自嘲的な笑みを浮かべる。
「え、まって小陽南ちゃん。その子って人間なのよね。猫とかうさぎとかじゃないのよね」
いや、猫もうさぎも血は赤いわね。ブツブツと呟くのを聞き、ハッとする。まだ弱音を吐きたい距離感ではない。
『そうね、人間だけど、私にとっては悪魔か何かかな』
それって友達なの?またブツブツ言い始めるルッス姐を笑って、本音を少し奥に追いやった。