novel
□HEAVEN
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雨のよく降るその日、メロは階下にその姿を見つけた。
(幻覚?人違い?)
メロは窓から落ちそうになるくらい、身を乗り出して階下の傘をさした人物の姿を凝視した。
「メロ、危ないですからあまり身を乗り出さないで」
傘がふわりと揺れて持ち上がり、その人物の顔が見えた。
「え、Lっ…!」
(聞いてない!ロジャーからは何も聞いてないのに!)
心の準備が何もできていなかったのに、毎日逢いたいと願ってやまなかったLが突如、目の前に現れたのだ。
メロはLの心配もむなしく、窓からずり落ちそうになった。
「…っ、うわっ…」
突然現れたLに思考が全て奪われたメロは、更に身を乗りだそうと雨に濡れた窓枠を掴んだのだ。メロの小さな手は当然の如く、勢い良く滑った。
「メロ、だから危ないと言ったでしょう…」
Lはメロが落ちた時抱き止められるよう建物に近付いていたが、何とか無事だったメロを見て安堵のため息を吐く。
「ご、ごめん…L…」
「慌てなくても私は逃げませんから、そこで待っていて下さい。」
Lはメロに優しく微笑みかけると、傘を閉じて建物の中へ入っていく。
(待ってられないよっ!)
メロは逸る胸を抑えきれず、窓際の棚から勢い良く飛び降りた。
「L、エルっ!!」
Lがワイミーズハウスの玄関を潜ると、まるで体当たりするかのような勢いで走ってきたメロに、思い切り抱きつかれた。
「怪我をしますよメロ…危ないですから、もう少し落ち着かなくてはダメです。」
姿勢の悪いLはその身体をまるで全身で包み込むように抱き締めてやると、軽々と抱き上げる。
「背が伸びましたね」
「うん!けど重くないだろ?」
「ええ。食事はきちんと取っていますか?」
「んと…まあ…大丈夫…」
Lの腕の中で、頬を掻きながら目を泳がせるメロだったが、Lの黒髪がふわりと近付いた時、また視線はLに釘付けとなった。
「チョコレートばかりではいけませんよ」
「…Lも甘いものばっかり食べてるじゃん。」
「そうですね…お互い様でした」
「…っ!エル…!?」
Lの唇がいきなり耳元に近付き、メロは文字通り耳まで赤くなった。
「…メロ、重くなってもちゃんと抱っこしてあげますから、食べたいものを我慢しなくてもいいんですよ。」
分かりましたか?と耳元で囁くLに、メロはただただ赤くなるしかなく言葉を返せなかった。