novel

□メロたんとチョコレート工場
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透き通った風が吹き抜ける、緑豊かな道沿いにそれはあった。

市街地から少しばかり離れたところに建つその建物の門には『Wammy's house』と刻まれた、真鍮のプレートが掲げられている。


ここはとある高名な発明家が創設した孤児院である。ここで暮らす子供達は皆英才教育を受け、将来は警察、司法、探偵業などに進む。


「やったなー!このっ」

「あはははっ」


英才教育を受けているとはいえ、学習時間以外は他の子供と何ら変わりなく過ごし、こうして楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


「メロ、ちょっと来なさい」


廊下ではしゃいでいた子供達の中に居た、一人の子供が腕を掴まれた。


見事なブロンドヘアーに、青と言うよりは水色の瞳をしたその子は、セミロングの揺れる髪とその顔立ちから女児と見紛う程だが、もうすぐ10歳になる男の子である。

メロというのは愛称で、本名はミハエル・ケールという。


彼は少しやんちゃだが、素直で人当たりの良い子だ。いつも黒い服を好んで着ていて、チョコレートが大好物だった。


「なに?ロジャー」

上目遣いで見上げるメロの腕を引いて、ロジャーと呼ばれたその老人は、メロを理事長室へと連れていった。「メロ、今回のテストは何点だ。言いなさい」


部屋に入ると机に備え付けの椅子に深く腰掛け、メロを見て気難しい顔をするその老人…ロジャーは、ワイミーズハウスの理事長を務めている。


「えっ…と…。数学が100点で…理科が…」


机の前に立つメロが恐る恐る口を開くと、ロジャーは普段は細めている目を少し見開き、強い調子でその言葉を遮った。

「メロ、何度言えば分かる。100点を取るのは当たり前だ。取れなかった教科の点数を言いなさい。」

「…っ……ごめんなさい…。…国語は…86点だった」

メロから普段のような明るい表情が消えた。肩を竦め、怯えたような目をする。

「メロ、私の目を見なさい」

怖がって視線を外そうとするが、ロジャーはそれを許さない。メロはまた上目遣いで、ロジャーの方を見るしかなかった。
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